雨の中の喫茶店
プロローグ(B)
私は喫茶店のアルバイトをしている。
その喫茶店は昼間こそビジネスマンでポツポツ席が埋まるものの街から少し離れているせいか、そうでないのか夕方になると全くお客さんが入らない。

曇り空が雨空にならなくては良いなぁと思いながら暇を持て余す。
寡黙なお店のマスターは良い人なんだけれど会話は弾まない。
何となくテーブルを拭いてまわっていると男の人が入ってきた。
注文を聞きに行くと"連れが来ますから”と少し微笑を返した。
少しして女性が入ってきて彼と同じテーブルに着く。
それが少し残念なのは前の彼と別れてまだ間もないせいなのだろうか?

二人して同じコーヒーを頼み他愛もない彼女の話を楽しげに聞いている彼。
別にこの男の人が好みな分けじゃないただ少し切なくなっているだけだ。
他にお客さんもいないマスターの趣味のJAZZしか鳴らない店内。
そんな中、二人の会話は優しく響き、とても踊って聞こえた。

あぁ、早く新しい恋がしたいなと思うけれど合コンは苦手。
友達の真理子に言わせれば、合コンは男をピンからキリまで選べるツール。
事実彼女は合コンでもてて、何人もの良い男と良い関係にある。
尊敬して見習っては見たものの私にはやっぱりダメ。
そんな中、こんなわたしが良いと言ってくれた人もいた。
でも、そんな彼とは結局上手くいかなくて3週間前に別れてしまった。

思い出すとあぁ、分かれたばかりはよく泣いていたっけ。
少し悔しくなって、誰かあの時のわたしの涙を返して欲しい。
幸せそうな二人を見て良く意味のわからない不満。
これはしょうがないじゃない、と自分に言い聞かせてみる。
こんな事考えてるようじゃあ次の恋も遠いな、なんて思っている時だった。
お客さんの女性の方がいきなり大声を上げたのは。
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