ずっと見守る
「落ち着いた?」
「うん。優ちゃん、ありがとう」
「いいから。それで?どうしたの?」
あたしは廉太くんのことを全部話した。
もちろん、走ってきたことも。
すると、優ちゃんはあたしの背中を優しく撫でた。
「それで、廉太は体育館に行ったの?」
「・・・・・・たぶん」
廉太くんの言葉を遮って来たから、それから体育館に行ったかどうかはわからない。
「よしっ。みぃちゃん、体育館行くよ」
「えっ・・・・・・。なんでっ」
「いいから!」
優ちゃんは、あたしの手を握って体育館に向かった。
体育館に入ると、すごい人で溢れていた。
「続いて告白するのは、1年2組の田中くんでーす!!」
司会者がマイクに向かってそう言うと、会場から「かわいー」とか「がんばれー」とか励ましの言葉が聞こえてくる。
「ホラ!廉太だよ!」
「聞きたくないよ・・・・・・っ」
「みぃちゃん、大丈夫だから聞きなって」
体育館から出ようとするあたしを、優ちゃんが引っ張った。
仕方なく、遠くにあるステージに目を向けた。
『1年2組の田中廉太です。俺は、入学したときからずっと、片思いをしています』
マイクに向かって堂々と話し始めた廉太くん。
廉太くんは照れたり、恥ずかしくなると、顔が耳までゆでダコみたいに真っ赤になる。
遠くからでもわかるくらい、顔が真っ赤に染まっていた。
そんなに、その子のこと好きなんだ。
そんなことを考えると胸が締め付けられる。
『ここにはいないと思いますが、この場をお借りして告白したいと思います』
次にきっと、廉太くんの好きな人がわかる。
自分だとは思わないけど、どこかで少し期待してるの。
もし、あたしだったらどうしようって。
あたしだったら、23歳までだから廉太くんにたくさん迷惑かける。
病気の人なんかと付き合ってどうすんのって思う。
『俺は・・・・・・』
それでも好きだから。
廉太くんは優しいよ。廉太くんのこと・・・・・・。
『同じクラスの寺崎美咲にずっと恋しています!』
・・・・・・え?
今、なんて・・・・・・?
「みぃちゃんっ、良かったね!」
優ちゃんが微笑みながら泣いている。
『俺は彼女が病気だからって特別な扱いはしていません。彼女も俺らと同じ人だから。いつも前向きで優しくて、笑顔がかわいくて、人のことばかり気にして不器用だけど。俺にとってかけがえのない存在です。俺は彼女を好きになれて・・・・・・幸せです』
廉太くんがそう言って微笑むと、涙が溢れ出た。
そんなことを思ってくれる人がいるなんて思わなかったから。
あたしは病気だからずっと周りに避けられてきたし、特別扱いだった。
小学校のときは「しょうがないよ」って、できないことを何もかも病気のせいにしてきたし、されてきた。
けど、廉太くんは違うんだ。もちろん、優ちゃんもみんなも。
「しょうがないよ」って言うけど、誰も「病気だもんね」とは言わない。
廉太くんは優しすぎるよ・・・・・・っ。
「はいはーい!廉太ーっ!みぃちゃんここにいるよーん!」
「ちょっ、優ちゃんっ!!」
優ちゃんが、ステージにいる廉太くんに向かって大きな声で、ここにあたしがいる宣言をした。
体育館にいるみんながこっちを向く。
廉太くんはさらに顔を赤くした。
司会者があたしに向かって、マイクに叫んだ。
「田中くんに告白をされた寺崎さん!お返事をどうぞっ!」
返事・・・・・・?
どうしてみんな、そんな期待をした目で見下ろすの?
あたしも好きだけど、決めてないよ・・・・・・っ。
わかんないっ。付き合っていいかわかんないよ。
『返事はいいから!返事はまだいいから!・・・・・・俺の気持ちだけ覚えておいて、美咲。ありがとうございました』
廉太くんの言葉に拍手が送られた。
優ちゃんに手を引かれて、ゆっくりと空き教室へ向かった。
いつもの人がこない空き教室。
入学してからすぐに仲良くなった廉太くんと優ちゃんと、暇なときとか使っていた空き教室。
「みぃちゃん、なんで返事しなかったの?」
「・・・・・・だって、あたし病気だもん。あのね、このまえ病院で余命宣告を受けたんだ。・・・・・・まぁ立ち聞きしたんだけどね」
無理に笑うと、優ちゃんは怒った。
「なんで言わなかったのよっ!!何かあったら言ってねって言ったじゃん!!どうして言ってくれなかったの!?」
「優ちゃ・・・・・・」
「みぃちゃんはさぁ!!いつもそうだよ。何も相談しないで、ひとりで抱え込むの!!どうして頼ってくれないの!?みぃちゃんが、クラスに戻ってきたとき病院どうだったって聞いたでしょ!?なんでそのとき言ってくれなか・・・・・・!!」
「怖かったの!!」
ひとりで暴走する優ちゃんの言葉を遮って、声を荒らげた。
優ちゃんはボロボロ涙をこぼしながら静かに椅子に座り直した。
久しぶりに大きな声を上げたせいか、少し息が上がる。
「余命宣告のこと、優ちゃんや廉太くんに言ったらどんな顔するだろうって。想像したら怖かったから・・・・・・。ごめん、なさいっ・・・・・・」
あたしは、泣き出してしまった。
優ちゃん、また迷惑かけるね。ごめんね。
「ううん。あたしこそ怒ってごめん。でもみぃちゃん?何かあったら言ってよ。こうやって言われるよりも、聞いたときとか、進んで話してくれたほうがもっと楽だよ」
「・・・・・・うん」
優ちゃんがいつもみたいに、優しく頭を撫でてくれた。
「みぃちゃん、あたし戻るからさ、ちゃんと言いなよ?隠してもこれからいいことないから」
え?ちゃんと言うって?
言ったよ?余命宣告受けたって、優ちゃん。言ったんだよ。
優ちゃんが空き教室を出るのと入れ替えに、廉太くんが入ってきた。
「美咲」
「廉太くん・・・・・・。今の聞いてた?」
「いや?聞いてない。優奈からメール来たからここに来た」
優ちゃんから?なんで優ちゃんいつのまに。
「それで、なんで泣いてるの?」
廉太くんが向かい側に腰掛けた。
距離が近くてドキドキするけど、言わなきゃないんだよね。
あたしの、命のこと。
「うん。優ちゃん、ありがとう」
「いいから。それで?どうしたの?」
あたしは廉太くんのことを全部話した。
もちろん、走ってきたことも。
すると、優ちゃんはあたしの背中を優しく撫でた。
「それで、廉太は体育館に行ったの?」
「・・・・・・たぶん」
廉太くんの言葉を遮って来たから、それから体育館に行ったかどうかはわからない。
「よしっ。みぃちゃん、体育館行くよ」
「えっ・・・・・・。なんでっ」
「いいから!」
優ちゃんは、あたしの手を握って体育館に向かった。
体育館に入ると、すごい人で溢れていた。
「続いて告白するのは、1年2組の田中くんでーす!!」
司会者がマイクに向かってそう言うと、会場から「かわいー」とか「がんばれー」とか励ましの言葉が聞こえてくる。
「ホラ!廉太だよ!」
「聞きたくないよ・・・・・・っ」
「みぃちゃん、大丈夫だから聞きなって」
体育館から出ようとするあたしを、優ちゃんが引っ張った。
仕方なく、遠くにあるステージに目を向けた。
『1年2組の田中廉太です。俺は、入学したときからずっと、片思いをしています』
マイクに向かって堂々と話し始めた廉太くん。
廉太くんは照れたり、恥ずかしくなると、顔が耳までゆでダコみたいに真っ赤になる。
遠くからでもわかるくらい、顔が真っ赤に染まっていた。
そんなに、その子のこと好きなんだ。
そんなことを考えると胸が締め付けられる。
『ここにはいないと思いますが、この場をお借りして告白したいと思います』
次にきっと、廉太くんの好きな人がわかる。
自分だとは思わないけど、どこかで少し期待してるの。
もし、あたしだったらどうしようって。
あたしだったら、23歳までだから廉太くんにたくさん迷惑かける。
病気の人なんかと付き合ってどうすんのって思う。
『俺は・・・・・・』
それでも好きだから。
廉太くんは優しいよ。廉太くんのこと・・・・・・。
『同じクラスの寺崎美咲にずっと恋しています!』
・・・・・・え?
今、なんて・・・・・・?
「みぃちゃんっ、良かったね!」
優ちゃんが微笑みながら泣いている。
『俺は彼女が病気だからって特別な扱いはしていません。彼女も俺らと同じ人だから。いつも前向きで優しくて、笑顔がかわいくて、人のことばかり気にして不器用だけど。俺にとってかけがえのない存在です。俺は彼女を好きになれて・・・・・・幸せです』
廉太くんがそう言って微笑むと、涙が溢れ出た。
そんなことを思ってくれる人がいるなんて思わなかったから。
あたしは病気だからずっと周りに避けられてきたし、特別扱いだった。
小学校のときは「しょうがないよ」って、できないことを何もかも病気のせいにしてきたし、されてきた。
けど、廉太くんは違うんだ。もちろん、優ちゃんもみんなも。
「しょうがないよ」って言うけど、誰も「病気だもんね」とは言わない。
廉太くんは優しすぎるよ・・・・・・っ。
「はいはーい!廉太ーっ!みぃちゃんここにいるよーん!」
「ちょっ、優ちゃんっ!!」
優ちゃんが、ステージにいる廉太くんに向かって大きな声で、ここにあたしがいる宣言をした。
体育館にいるみんながこっちを向く。
廉太くんはさらに顔を赤くした。
司会者があたしに向かって、マイクに叫んだ。
「田中くんに告白をされた寺崎さん!お返事をどうぞっ!」
返事・・・・・・?
どうしてみんな、そんな期待をした目で見下ろすの?
あたしも好きだけど、決めてないよ・・・・・・っ。
わかんないっ。付き合っていいかわかんないよ。
『返事はいいから!返事はまだいいから!・・・・・・俺の気持ちだけ覚えておいて、美咲。ありがとうございました』
廉太くんの言葉に拍手が送られた。
優ちゃんに手を引かれて、ゆっくりと空き教室へ向かった。
いつもの人がこない空き教室。
入学してからすぐに仲良くなった廉太くんと優ちゃんと、暇なときとか使っていた空き教室。
「みぃちゃん、なんで返事しなかったの?」
「・・・・・・だって、あたし病気だもん。あのね、このまえ病院で余命宣告を受けたんだ。・・・・・・まぁ立ち聞きしたんだけどね」
無理に笑うと、優ちゃんは怒った。
「なんで言わなかったのよっ!!何かあったら言ってねって言ったじゃん!!どうして言ってくれなかったの!?」
「優ちゃ・・・・・・」
「みぃちゃんはさぁ!!いつもそうだよ。何も相談しないで、ひとりで抱え込むの!!どうして頼ってくれないの!?みぃちゃんが、クラスに戻ってきたとき病院どうだったって聞いたでしょ!?なんでそのとき言ってくれなか・・・・・・!!」
「怖かったの!!」
ひとりで暴走する優ちゃんの言葉を遮って、声を荒らげた。
優ちゃんはボロボロ涙をこぼしながら静かに椅子に座り直した。
久しぶりに大きな声を上げたせいか、少し息が上がる。
「余命宣告のこと、優ちゃんや廉太くんに言ったらどんな顔するだろうって。想像したら怖かったから・・・・・・。ごめん、なさいっ・・・・・・」
あたしは、泣き出してしまった。
優ちゃん、また迷惑かけるね。ごめんね。
「ううん。あたしこそ怒ってごめん。でもみぃちゃん?何かあったら言ってよ。こうやって言われるよりも、聞いたときとか、進んで話してくれたほうがもっと楽だよ」
「・・・・・・うん」
優ちゃんがいつもみたいに、優しく頭を撫でてくれた。
「みぃちゃん、あたし戻るからさ、ちゃんと言いなよ?隠してもこれからいいことないから」
え?ちゃんと言うって?
言ったよ?余命宣告受けたって、優ちゃん。言ったんだよ。
優ちゃんが空き教室を出るのと入れ替えに、廉太くんが入ってきた。
「美咲」
「廉太くん・・・・・・。今の聞いてた?」
「いや?聞いてない。優奈からメール来たからここに来た」
優ちゃんから?なんで優ちゃんいつのまに。
「それで、なんで泣いてるの?」
廉太くんが向かい側に腰掛けた。
距離が近くてドキドキするけど、言わなきゃないんだよね。
あたしの、命のこと。