ずっと見守る
涙✩2
まだ大丈夫
「廉太くん。おかえり」
「ただいま」
なぜかわからないけど毎回、廉太くんが来ると「おかえり」って言っちゃうの。
あのとき、あたしの意識が切れてから2週間。
目を覚ましたら病院のベッドにいた。
1週間まえから、廉太くんは学校帰りに病室に来てくれている。
面会時間は8時まで。7時半とかギリギリまでいてくれるんだ。
「美咲。これ優奈から」
「優ちゃん?あははっ。なにこれーっ」
変な形のマフラー。
優ちゃんもあたしみたいに不器用だからな。
きっと頑張って編んだんだろうな。
形は変だけど、すごく温かい。
「美咲、体調は?」
「うん。大丈夫だよ」
あたしが笑顔でそう言うと、廉太くんも笑顔をくれる。
「あら?みぃちゃん、お友達?」
「あ、お母さん・・・・・・」
お母さんが不思議そうに廉太くんを見る。
廉太くんは素早く立ち上がって、お母さんの方を向いた。
「初めまして。美咲さんとお付き合いさせてもらっています!田中廉太です!」
そう言うと、廉太くんは深々と頭を下げた。
その廉太くんを見て、お母さんは慌てて駆け寄った。
「頭を上げてちょうだい!」
「あ、はいっ」
お母さんは廉太くんを見ると、優しく柔らかく笑った。
「みぃちゃんのことよろしくね。素敵な男の子でよかったわ。じゃあ、お母さんはちょっと売店に行ってくるから」
そう言うと、お母さんは病室から静かに出て行った。
廉太くんは崩れるように椅子にもたれかかった。
「れ、廉太くん?」
「緊張した。でも美咲のお母さん、優しそうで良かった」
「えへへ」
昔も今も、お母さんに似て優しいんだねっていわれる。
「今度さ、美咲のお父さんにも挨拶しなくちゃな」
「・・・・・・お父さんはいないの」
「え?」
あたしのお父さんは、あたしがまだ小さい頃に死んでしまった。
病気とかじゃないけど、横断歩道を渡りきれなかったおばあさんを助けて、トラックにはねられた。
その光景を見たわけじゃないけど。
きっとお父さんは自分の意思で助けた。
そのことを廉太くんに話すと、微笑んだ。
「美咲のお父さんもいい人なんだね」
「うんっ」
そんなたわいもない話をしていると、お母さんが戻ってきた。
「廉太くんだったかしら?もう7時半よ。お家の人、心配するわよ。このお茶、持って行って?」
「そんな!大丈夫です!」
「いいの、いいの。私が勝手に買ったの。どうぞ」
お母さんは無理矢理、廉太くんの手にお茶を乗せた。
廉太くんはお礼を言って頭を下げた。
「じゃあ俺はこれで。ありがとうございました。美咲、またな」
「うん。ありがと。またね」
廉太くんは再びお母さんに頭を下げて病室を出た。
「みぃちゃん、廉太くんで良かったわね」
お母さんは椅子に腰掛けながら微笑んだ。
「うんっ!あ、お母さん、レターセットである?」
「あるわよ?」
「廉太くんにお手紙書くの」
「そう。・・・・・・はい、どうぞ」
「ありがとう」
テーブルにそれを広げて、廉太くんに手紙を書く。
「お母さんは帰るわね。明日もお仕事があるから、明日の夜にまたくるわ」
「うん。頑張ってね」
「ふふ。美咲もちゃんと薬飲みなさいよ」
「はーい」
お母さんは仕事用のカバンを持って、手を振って出て行った。
「ただいま」
なぜかわからないけど毎回、廉太くんが来ると「おかえり」って言っちゃうの。
あのとき、あたしの意識が切れてから2週間。
目を覚ましたら病院のベッドにいた。
1週間まえから、廉太くんは学校帰りに病室に来てくれている。
面会時間は8時まで。7時半とかギリギリまでいてくれるんだ。
「美咲。これ優奈から」
「優ちゃん?あははっ。なにこれーっ」
変な形のマフラー。
優ちゃんもあたしみたいに不器用だからな。
きっと頑張って編んだんだろうな。
形は変だけど、すごく温かい。
「美咲、体調は?」
「うん。大丈夫だよ」
あたしが笑顔でそう言うと、廉太くんも笑顔をくれる。
「あら?みぃちゃん、お友達?」
「あ、お母さん・・・・・・」
お母さんが不思議そうに廉太くんを見る。
廉太くんは素早く立ち上がって、お母さんの方を向いた。
「初めまして。美咲さんとお付き合いさせてもらっています!田中廉太です!」
そう言うと、廉太くんは深々と頭を下げた。
その廉太くんを見て、お母さんは慌てて駆け寄った。
「頭を上げてちょうだい!」
「あ、はいっ」
お母さんは廉太くんを見ると、優しく柔らかく笑った。
「みぃちゃんのことよろしくね。素敵な男の子でよかったわ。じゃあ、お母さんはちょっと売店に行ってくるから」
そう言うと、お母さんは病室から静かに出て行った。
廉太くんは崩れるように椅子にもたれかかった。
「れ、廉太くん?」
「緊張した。でも美咲のお母さん、優しそうで良かった」
「えへへ」
昔も今も、お母さんに似て優しいんだねっていわれる。
「今度さ、美咲のお父さんにも挨拶しなくちゃな」
「・・・・・・お父さんはいないの」
「え?」
あたしのお父さんは、あたしがまだ小さい頃に死んでしまった。
病気とかじゃないけど、横断歩道を渡りきれなかったおばあさんを助けて、トラックにはねられた。
その光景を見たわけじゃないけど。
きっとお父さんは自分の意思で助けた。
そのことを廉太くんに話すと、微笑んだ。
「美咲のお父さんもいい人なんだね」
「うんっ」
そんなたわいもない話をしていると、お母さんが戻ってきた。
「廉太くんだったかしら?もう7時半よ。お家の人、心配するわよ。このお茶、持って行って?」
「そんな!大丈夫です!」
「いいの、いいの。私が勝手に買ったの。どうぞ」
お母さんは無理矢理、廉太くんの手にお茶を乗せた。
廉太くんはお礼を言って頭を下げた。
「じゃあ俺はこれで。ありがとうございました。美咲、またな」
「うん。ありがと。またね」
廉太くんは再びお母さんに頭を下げて病室を出た。
「みぃちゃん、廉太くんで良かったわね」
お母さんは椅子に腰掛けながら微笑んだ。
「うんっ!あ、お母さん、レターセットである?」
「あるわよ?」
「廉太くんにお手紙書くの」
「そう。・・・・・・はい、どうぞ」
「ありがとう」
テーブルにそれを広げて、廉太くんに手紙を書く。
「お母さんは帰るわね。明日もお仕事があるから、明日の夜にまたくるわ」
「うん。頑張ってね」
「ふふ。美咲もちゃんと薬飲みなさいよ」
「はーい」
お母さんは仕事用のカバンを持って、手を振って出て行った。