魔王vs神王→私!?
『よくないよ!』
私は、思わず叫んでいた
空虚な心ではあるが、決して感情の起伏がないわけではない
今の状況を、怖い、と認識できていた
「知りたいんですか?」
キョトン、と効果音がつきそうな奏くんの顔
そんなに気になるんですか?
そう、語っているようであった
『もちろんだよ、知りたい』
言い知れぬ恐怖を払拭するためには、元凶を突き止めなければならない
「いいですよ、結莉先輩には教えてあげます
実は、結莉先輩のお父様を利用させてもらったんです」
『・・・え?』
何の脈絡もなく出てきた、父
父を、利用・・・?
「はい。結莉先輩のお父様の会社、うちの企業のなんですよ
だから、僕が、言ったんです
潰されたくなかったら、言うことをきけって
まあ、その言うことが、お父様の部屋に住まわせてもらうことだったんですけどね」
奏くんが、今、父の部屋に住んでいる・・・?
信じがたい事実に、私は呆けるしかなかった
「あ、これ、僕が親には何も言わずに勝手にやったことだから、誰にも言わないでくださいね」
にこにこと、かわいらしく笑う奏くん
秘密の悪戯を共有するみたいに
「お父様、なんと監視カメラまで用意してくれていたんですよ!
優しいお父様ですね、さすがは結莉先輩のお父様
だから、昨日の夜、結莉先輩が、
何回あくびをして、何回髪を結び直して
何回スマフォををいじっていたか知っているんです
その中でも泣き顔と寝顔はきゅんきゅんしちゃいました
でも、泣かせたお父様には、少なからず殺意が芽生えましたね
そして、手作り目玉焼きとサラダを見た瞬間に、それを実行しました
美味しくないと言って、結莉先輩を愛せないと言った男に、何を躊躇する必要があるんでしょう
ないですよね!だって先輩を傷つけてしまったのだから
あれ?う~~ん、この場合、嘘を吐けと仕向けた僕が悪くなるんでしょうか?
難しいラインですね、どうなんでしょうか?
まあ、いいか!
どうせ、結莉先輩のお父様、もう
死んでいるんだから」