魔王vs神王→私!?
「捲けた・・・か?」
しばらく走ると、青年は立ちどまった
息がきれた。もう今日は走りたくない
「ユーリ、大丈夫か?」
どうやら私は運動が苦手らしい
生前、引き籠ってでもだったのだろうか
『大丈夫、だよ・・・多分』
私に必死に謝る青年をなだめ、私はあたりを見まわした
ここ、どこだろう
そもそも、昨日は家の前に出ただけ、今日は家の前の大きな通りを歩いていただけ
天界の地理なんて、知るはずない
そんな私の様子に気づいたのか、青年が慌てだす
「もしかして・・・ここがどこかわかんねぇの?」
・・・その様子だと、そちらも分かってなさそうですね
『えっと。どうやって帰りましょうか』
「ええええええ、天使のくせに地理に疎いとか、何事だよ!!!」
私天使なのか怪しいのに、なにその言い草!!!
『っていうか貴方だって天使でしょう!?
なんで迷子なんかになるんですか!』
自分の事棚に上げて、人にばっかり言うとか!
私が言い返すと、青年は凄い顔で私を見つめた
その顔が物語っているのは
≪何言っているんだこいつ≫
な、何かまずいことでも言っちゃったっけ?
青年は、呟くように言った
「お前気づいてなかったんだな
道理で俺に向かって口答えするわけだ」
・・・・・????
あの、えっとぉ?
頭の上にクエスチョンマークを浮かべていると、青年は意味深に笑った
・・・嫌な予感以外しないんですけれども
「俺は シオン
魔界を統べる、いわゆる魔王ってヤツだ」
・・・・・・・・・・・。
魔王、ですか。
はいはい。
『・・・・私、断頭台に立たなくてはなりませんか?』
散々、いろんな失礼な事を言っちゃった憶えがあるよ
命の危機を感じるっ・・・!
「そんなに怯えんなって
俺様は、神王の願いを聞き入れた、心優しい魔王なんだぜ?」
くっくっく。
私の反応を面白がるようにして、シオンさまは笑う
そういえば、シオンさまの服は、漆黒に染まっていた
天界では見ないのに、どうして天使だと思ったのだろう
『あ、あのっ・・・必ず、帰路を探し出しますので!』
何としてでも機嫌を損ねてはならない
それに心優しい魔王がいるなら、それは魔王じゃなくて神王だよ