魔王vs神王→私!?

ー神王の城・書物庫ー





 レンくんの城に通された私は、一人で書物庫にいた






 シオン様は、天界に招待されていたらしく、どこかに通されていた







 ・・・予想だけど、もしかしたらシオン様は、家臣の皆さんから逃走していたのかもしれない





 
 鬱陶しがっていたし、魔王が一人で天界に来るなんて、そんなはずはないだろうから





 ・・・書物庫は、本当は限られた人しか入ってはいけないらしい






 でも歴史や、現代の文化は、知っておかなければならない事



 
 少し無理を言って利用させてもらった






 魔界と天界の、長きにわたる争い





 刺客によって命を奪われた王の最期




 そして・・・戦争の中で、命を落とした兵の扱い







 これは確かに、一般市民に公開していいものではない





 私なんかが入っても、なにも分からないからこそ許可が下りたのかもしれない






 見上げるほどの高さの本棚は、一種の威厳さえ感じられた





 『・・・まともに読んでたら、何十年かかるんだか』




 
 これは、後に回そう。




 血で汚れた歴史を見続けられるほど、私の精神力は強くない





 それに、今必要なのは、天界の現在の情報




 
 歴史については、魔界と天界が、争い続ける系譜に抗って今は平和になった・・・って感じで良い気がする





 「そんなに簡単なものじゃなかったけどな」






 『でも、簡略すれば、こんな感じじゃないかな』





 そう。もういいの。歴史は、知らなくてもいい。ずっと天界にいる気はないし





 
 ・・・・・って、え??





 あまりにも普通に話しかけられてしまって、まったく違和感がなかったけど・・・





 『シオン様・・・!?』



 
 いつの間に隣にいたのか、考え事をしていた私には見当がつかない





 驚きで軽くドキドキしている私に構わずに、シオン様は言葉を続けた




 「簡略しすぎだろ。系譜に抗ったのは、一回だけじゃないんだからな。

 何回も何回も・・・赦しあおうとしてきた

 その度に、どちらかの王が、相手の矢に打たれていった

 平和になるまでに、永い年月と、途方もない数の兵が死んでいった

 この歴史は、簡単にまとめていいものではない」







 苦しげに話すシオン様は、やっぱり魔界を統べる王なのだと再認識させられた





 『国の民の事を、慈しんでいるのですね』




 シオン様の言うとおり、優しい魔王様も、いるのかもしれない





 『きっと魔界の民も、シオン様が王でよかった、と思っていますよ』






 こんな国王の下でならば、安心して生活できる気がする





 ・・・永住する気はないけど




 「なっ・・・!?お、王として当然の事だ!」





 時間差で、耳まで真っ赤になりながら、シオン様はそっぽを向いた






 ・・・もしかして、照れた??





 『いやいや、シオン様の国で生活してみたいくらいですよ』





 ・・・永住する気はないけど(2回目)




 そんな心中を無視したかのように、シオン様は言った





 「・・・来るか?」





 『え・・・?魔界にですか?』






 短時間で、かつ安全な旅行だったら、興味がある





 行ってみたいなあ、と考えていたのに






 シオン様が発した言葉は、私には絶対に予想できなかった言葉







 「いや、魔界にもだが・・・・嫁に」






 
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