魔王vs神王→私!?


 「レンに抱きかかえられているときは、平気そうだったじゃねーか」






 唇を尖らせて、シオン様は言った





 「なんで俺は怖くてレンは大丈夫なんだよ」






 ずいっと顔を近づけて、シオン様は問うた




 
  
 
 ・・・いいえ、レンくんのときだって怖かったですよ






 誰かを抱えて飛ぶなんて、レンくんもシオン様も、普段しないだろうから






 いつ落とされるのか、ずっと嫌な汗が流れていましたよ






 ・・・でも






 『強いて言うなら、安心感、ですかね
 シオン様とは、はじめましてから数分しか経っていなかったから

 それに、シオン様は魔王ですから。
 わざと落として、空の上から大笑いする未来だって考えていました』






 そこまで言ってからシオン様に目を向けると、打ちひしがれたシオン様が視界に飛び込んできた






 少し離れたところでうずくまっている彼の背中は、そんなにひどく思われていたのか、とでも言いたげだった





 
 どこか捨てられた子犬のような雰囲気が漂っている






 しくしくしくしく、とでも効果音をつければ、最高にマッチするに違いない



 

 『・・・まあ、もしもあの時、今の関係で空を飛んでいたら、そんなに嫌がらなかったかもしれませんね』





 私も隣に屈みこみ、ぽんぽんとシオン様の肩を叩きながら、言う





 にっこりと笑うと、シオン様は顔を上げて私を見た






 『今は、シオン様が優しい事、知っていますからね』






 私が言葉を紡いでいくたびにシオン様の目には光が溢れた






 「ユーリ・・・!」





 シオン様はついに両手を広げて私に抱きついた





 ・・・・・犬だ。犬魔王だ。





 今のシオン様には、耳と尻尾が見える気がしてくる






 小動物特有の可愛らしさに和んでいると、後ろから誰かに抱きあげられた






 「シオン、あんまりさわらないでくださいよ
 ぼくがつれてきたんですからね?」





 
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