魔王vs神王→私!?



 -客間ー



 私は、もう何度目になるか分からないが、頭を下げた






『シオン様、お願いします!!!!』






 そして、同じく何度目になるか分からない返事






 「いや、無理だって言ってんだろ」






 もうそろそろ諦めてくれよ、とでも言いたげに、頬杖をつくシオン様





 それもそうだ。





 
 神王との話し合いが終わってから、既に4時間が経過






 私が寝不足で気を失ってから、気がつくまでの時間は約1時間半





 目覚めてすぐ部屋に押しかけて待っていたのだから、3時間とまでは行かないが、大体それくらいの時間この会話を繰り返しているのだから






 しかしそんなことは関係ない





 だってここでシオン様が私の過去を教えてくれたら、私は自由になれる







 一生、こき使われることがない






 ・・・たとえ、シオン様が疲れていようとも、すぐに話してくれれば済むことなのだから、私は気を悪くなんてしない





 いや、流石に可哀想ではあるけどね



 

 3時間、シオン様は口を閉じたまま





 だんだんと、こき使われる未来が近づいてきている気がした





 『そこまでしてレンくんの味方するなんて、酷いです~・・・』





 

 膝をついてお願いしていたから、恥ずかしさと疲れで、自然と涙が滲む






 相手が椅子に座り、こちらが跪く





 見下ろされるのは、意外と精神的にキツいものだった



 
 涙に驚いたのか、シオン様は突然うろたえ始めた






 「な、泣くなって!いや、教えたくない訳じゃないんだ!
 でも俺はレンよりも立場弱いし、教えたってバレたら何をされるか・・・!」





 
 顔を青くしながら、早口でまくしたてられる




 「あぁあそうだ!それにレンは、思い出せと言ったんだろ?
 なら俺に答えを訊いたら駄目だろ!?
 それこそ半永久的にレンの愛玩人形だ」





 必死で訴えてくるシオン様の意見は、しっかりと筋が通っている






 愛玩人形じゃなくて、こき使う道具の間違いだけど






 『・・・・それもそうですね』






 同意すると、シオン様は、だろ!?とひきつった顔で笑った





 私は頷いて、一つの疑問をぶつけた




 『魔王と神王って、魔王の方が立場弱いんですか』




 



 今日見た書物には、そんなことは書かれていなかった





 ただ単に、それこそ興味本意で訊いた事






 それなのに





 シオン様は、押し黙った






 『し・・・シオン、様・・・?』





 

 訊いては駄目な事だっただろうか





 いつも悪戯っ子のように笑っているからこそ、真顔のシオン様を見ると、罪の意識に苛まれた




 『あ、あの・・・すみません、でした
 やっぱりいいです、大丈夫ですから』






 ・・・怒らせて、しまった?






 再び謝罪し、部屋から出て行こうとドアに向かって走り出すと






 
 うしろから手を引かれた






 『し、シオン様・・・?』





 驚きで、掠れた声しか出せない







 空を飛んだ時以来の、シオン様の、腕の中







 シオン様は私の肩に顔を埋めていた







 「・・・・・俺が、ユーリを巻き込んだ」







 今にも消えそうな声で、まるでうわごとのように呟かれた言葉






 『し、シオン様・・・?』




 巻き込まれたって、私が・・・何に?





 混乱する私を余所に、シオン様は続ける





 「巻き込んでしまったのに、何もできない
 結局、その心に雨を降らせてしまう

 俺のしたことは、俺の、自己満足だったのかもしれない

 ・・・ごめん。ユーリの意思も訊かずに行動して
 今更だけど、本当にごめん」







 抱きしめられているせいで、シオン様の震えがわかりやすい






 何を、思っているのですか・・・?







 何を、謝っているのですか・・・?






 何を、私にしたのですか・・・・?








 その問いは、出すことをはばかられた





 
 レンくんによって






 
< 196 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop