魔王vs神王→私!?
-魔界の城・地下ー
紫色に染まった世界で、薄暗い階段を降りるのは、本当に怖い
シオン様の手がなかったら、助けを呼んでいたところだ
それでも、引っ張ってくれる手があっても、降りる量が多ければ不安になる
『シオン様・・・まだ降りるのですか?』
私が5回目になる言葉を発すると、シオン様は呆れたように言った
「・・・もうつく」
先程気づいてしまったのだが、私はレンくんの部屋から連れ出されてしまったからネグリジェにスリッパと言う薄着
地下に降りる格好ではない
怖さと寒さで早くも天界に帰りたくなってきている私を励ますかのように、シオン様は声をかけた
「着いたぞ、ここが、魔の湖だ」
始めて見る湖は、神秘的な場所だった
きらきら、ふわふわ
何とも言えない雰囲気が漂っている
そして、空気の密度が高い、と表せばいいのかもしれない
息が、苦しかった
『・・・素敵・・・』
思わず湖に引き寄せられるように歩き出す
紫色への恐怖も、寒さも、忘れていた
『シオン様、来てください!
すっごく綺麗ですよ!!』
「いつもここで人間見てるから、俺は知っている」
苦笑されても、それでも。
そわそわと浮足立つのを感じていた
辿り着いた湖畔から、水の中を覗き込む
記憶のヒントが得られるかもしれない、という希望を込めて
しかし、映るのは私の顔ばかり
紫色の自分の顔なんて、気持ちが悪い
『・・・シオン様・・・なにも見えませんよ・・・?』
そう言いながら、眼を凝らし続ける
すると、水に、シオン様が映った
・・・手にナイフを持った、シオン様が
『ッッ!?!?!?』
思わず振り返り、逃げるために立ち上がった
だが、そこまでしたところでシオン様につかまってしまった
後ろから抱きしめられるように体が密着させられ、左手首が囚われた
「何逃げようとしてるんだよ、ユーリ」
空いた右手をばたつかせ、必死でもがいても拘束は解かれない
『やだ、はなしてっ!!』
殺される、逃げろ
頭の中で、警報が鳴り響いていた
じたばたと脱出を試みるも、その間に凶器は迫って来ていた
そしてついに、ナイフが私の首筋を這った