魔王vs神王→私!?


 『っ!!!!』





 刃が這った部分が、途端に熱を帯びた





 
 傷は、深くない






 うっすらと血がにじむ程度の傷






 それでも、切られたと認識した瞬間、涙が溢れた






 心のどこかに、甘えがあったのかもしれない






 シオン様の冗談だ、本当に切りなんてしない、シオン様なら大丈夫








 その期待を裏切られて
 その希望を絶たれて







 私は、泣きだしてしまった






 さらにシオン様は、私の腕を切った





 膝下のスカートを捲り上げ、ももを切った





 お腹を、手の甲を、肩を、体中を。







 僅かに血がにじむ傷を、いくつも作られた





 
 そのたびに痛みと熱が生まれる







 耐えがたいものだった







 「・・・美しい。綺麗だ」






 シオン様が耳元で言う








 その言葉に、私は瞠目した






 
 ≪・・・美しい、とっても、綺麗ですよ、~~~~。≫









 夢の中の、レンくんと同じ、あの声が聞こえてきた






 
 私はその言葉を、聞いたことがある。







 
 「綺麗なものは、壊れても尚美しい

 ・・・だからこそ、壊したくなる」







 ≪綺麗なものは、壊れてこそ、その本質が見えてくるんですよ
 ・・・だからこそ、壊したくなるんです≫







 「壊れてしまえよ」







 ≪壊れてください、僕のために≫









 いろんな種類の恐怖が入り混り、かたかたと震える視界








 わけがらからず、混乱している私を








 シオン様は、湖に突き落とした








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