魔王vs神王→私!?






 『きゃあああっ!!』






 ガラスの蓋を破って、私はワインの湖に沈む







 突然の事に対応できず、ワインが胃に、肺に、流れ込んでいく







 必死で水面から顔を出し、酸素を取り込もうと息をしかけたその時









 奏くんは恍惚とした表情で私を見ている事に気付いた









 「結莉先輩・・・美味しそう・・・
 はやく飲みたい、食べたいです」









 そんなことを呟く彼の姿は、ひどく恐ろしくて









 私ははやくこのガラスの筒から脱出しようと手を伸ばす










 『・・・っく・・・』








 あがれ、ない・・・!






 さっき考えたように、ガラスにはある程度の厚みはあるものの、手をついて上がれるほどではなかった
 









 辺りを見回しても、掴まれそうなものはない









 『・・・か、奏くん・・・』








 無理だとはわかってはいるが、一応出して、と頼んでみることにする










 しかし、頭の中に用意した言葉は、使われることがなく終わった








 
 「はぁあ、楽しみだなぁ・・・」








 奏くんの意識はどこかへ行っていて、私の声さえも届いた様子がない










  
 相変わらず頬を真っ赤に、時折不気味な笑い声を洩らしていた









 

 泣きそうになってしまう








 
 どうしてこうも、私の人生は囚われてばかりなの・・・?










 
 愛されたいがために、父に心を囚われ











 愛されたがために、奏くんに体を囚われ











 ずっと、このまま自由になれないならば










 私は・・・自分の手で、自由を掴む!!












 
 
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