魔王vs神王→私!?
「ユーリは、やっぱり愚かですね
僕は、貴女の心が読める事を、もう忘れてしまったんですか?
寂しいですよ、まったく」
やれやれ、とでも言いたげに奏くんは溜め息を吐いた
私の良心を傷付けるための策略だったのだろう
実際に私は心を痛めているし。
でも、なにより問題なのは心を読まれたことにひどく懐かしさを感じるところだと思う
それほどまでに私は奏くんに飼いならされ・・・いや奏くんと一緒に過ごしてきたということの表れなのだから
少しだけ落ち込んでいると、奏くんが人差指で私の額を小突いた
「ユーリ、僕は、ここでは奏じゃなくてカナデですよ
適応能力がないところまで変わりませんね」
まあ、そういうところが愛おしいんですけど
そう言って、奏くんは・・・カナデくんは続けた
「僕はユーリが人の目に怯えて、いつでもびくびくしている事に、気づいていましたよ。」
そっと私の右頬に、カナデくんの手が添えられる
温かくて、優しい手。
心地よさに、ふっと心が安らいだ
「確かに最初は、ユーリが僕に対して優しかったから好意を持ちました。
ですが、ユーリが本当は、弱い人なのだと分かってから、もっと好きになったんです
強がりは、弱さの裏返しだったって事ですよね
心の弱い者同士、慰めあっていけたらって思いました
それに、劣等感ばっかりだった僕に、ユーリの本心を知っているのは僕だけだっていう優越感を与えてくれましたから
僕は、外面のいいユーリも、怖がりなユーリも、愛していますよ」
・・・愛して、いる。
その言葉は、心が欲していたもの
決して、与えてもらえなかったもの
求めすぎるのは卑しい事だとずっと我慢していた
『・・・本当に?』
あまりにもすんなりと与えられた、愛
でも私はそれを簡単に信じてしまうような、綺麗な心の持ち主なんかではない
添えられた手に自分の手を重ね、問うてみた
答えは分かっている
それでも、聞きたい
カナデくんは私の心中は分かっているであろう
それでも、意地悪く言った
「疑うんですか?悲しくなりますね。
愛していますよ、ユーリ
この世界の何よりも」
くい、とカナデくんは私の顔を上げさせ、目を合わせた
『カナデくん・・・』
だんだんと近づいていく顔
私は、目を閉じた