魔王vs神王→私!?
ー天界・神王の城ー
「ようこそおいでなさいました、魔王様」
「神王様は、もうお待ちですよ」
やはり、天界の召使いは、魔界のそれとは違う
完璧な笑顔、完璧な対応、完璧な立ち振る舞いに、カナデは感嘆の溜め息を吐いた
「それはすみません、遅れてしまいましたか?」
社交辞令にさえも、丁寧すぎるほどの返事
こんなにも優遇される、神王という役職に就きたい。
カナデは来る度に神王であるシオンに、少なからず嫉妬の念を抱くのである
「すまない、わざわざ魔界から天界まで。
手間をかけたな、カナデ」
通された部屋には、ティーカップを持ち、優雅に座るシオンがいた
給仕に勧められるままに、カナデも紅茶を頂く
温かい紅茶は、絶妙なブレンド加減で、えも言われぬ美味しさだった
夢中で飲むカナデの持ってきた、孤独な少女の情報を見るシオン
しかめ面をし、更には溜め息を吐いた
「ひどいな・・・この子の親は、何をしているというんだ・・・」
「・・・・シオンは、知らないだけですよ。
近頃、こんな子は増加を辿る一方です
ただ、シオンの見る湖に映らないってだけで」
汚い人間を見なくてもいいなんて、なんて幸せな奴なんだ、とカナデは心の中で溜め息を吐く
そうだったのか。そう言って驚くシオンがまた、カナデの心の闇を増大させた
「カナデ、どうにかしてこの娘を助けられないか?」
なんて言うものだから、カナデは遂に溜め息を吐いてしまった
「はぁあ~・・・シオン、そんなことを言っていてはこれから先、自滅しますよ?
確かにシオンが、こういった境遇の人間の子を見るのは初めてかもしれません
ですが、こんな子は腐るほどいます
諦めて天界への受け入れをこの紙に記して下さい」
ゆっくり、諭すように言うと、シオンは押し黙ってしまった
じっと、じぃっと、見つめ続ける
カナデがシオンの名を呼んでも、反応がない
何を思っているのか、普段から一人で行動するカナデにはさっぱり分からなかった