魔王vs神王→私!?
「どうして!!記憶を消す必要があるの!?」
カナデが立ち上がった拍子に、椅子が倒れ大きな音をたてた
カナデは気にせずに続ける
「シオンはどうして、ルールに従わないの!
この娘を生き返らせた時、どうなった!?
死ぬほど苦しい思いしたよね!?
僕にも、禁忌を犯させる気!?
嫌ですよ!僕は苦しいのなんて!!」
一旦言いだしてしまうと止まらない性格のカナデは、やはり今回も溢れだす言葉をそのまま紡いでいた
シオンは真剣な表情でそんな神王を見ていた
「僕はシオンよりもたくさんの事知っているんですから、シオンは僕の話を聞いて、自分に最も優しい選択をしたらいいんですよ!!
ああ、だからシオンに魔王をやらせるのは嫌だったんです!!!」
ばん、ばんと何回もテーブルに両手を打ちつけ、怒りと焦りを露わにするカナデ
それでもシオンは怯まずに食いつく
「カナデ嫌だって言うんなら、俺が全ての苦痛を受け持つ。
俺はこの少女に好意を抱いているんだ
何をしてでも、何を犠牲にしても
助けたい
なのに記憶があるままでは、きっとまた親という存在に縛られて、幸せになれない
だから、お願いだよ!」
シオンは右手を自らの左胸にあて、訴えた
カナデの冷たい目にも負けずに
「ひたむきに親の帰りを待っているこの子は、
俺の頭の中も心の中も、全てを奪った
幸せに、なってほしいんだ・・・」
最後は俯き、消え入りそうな声になってしまった
けれどもシオンは、心の内を吐露したのだ
カナデも、本気だという事はわかった
しかしながら、カナデはまだ、シオンが何を言っているのかを理解することはできなかった
「・・・シオンと僕は一生、分かりあえないのかもしれませんね」
その一言に、カナデは返事の意味を込めた
少なくとも、カナデはそうしたつもりだった
だからこそ
「条件付きでどうだ?」
シオンのこの言葉は、予想を超えていた