魔王vs神王→私!?




第一印象は、意外にも良いものであった







「貴女の名前は?」


「双見結莉、です」







カナデは、騒がしいものが嫌いである







すると必然的に小さな子供も嫌いな訳なのだが、結莉は随分と従順だった







一筋縄ではいかぬと踏んでいたのに、拍子抜けである






しかし、従順なのなら、それで良い






そっちの方がずっと楽である






「おにぃちゃん・・・神様ですか?
私、死んじゃったんだ。よかったぁ、無事に死ぬことが出来て。天国に行けて」







にこりと笑って、こんなことを言いだすのだから、カナデは結莉の頭を疑った








「無事に、って・・・死にたかったんですか?」







「はい!父から、要らないって言われちゃったから、私は死ぬべきだったんです」








カナデは、自分の耳を疑い始めた







見る限りでは、この少女はまだ7、8歳








それにも関わらず、敬語が使え、訳のわからぬ悟りを開いているあたり、そんな年齢ではないはずだ








「うふふふ、神様、はやく私を天国に連れて行ってください」








わくわくとした様子で結莉は手を差し出す







カナデは、延命のために降り立ったのだと言えなくなってしまった







こんなにも嬉しそうなのだ、心も痛む







「私は、誰からも好かれていないし、必要とされていないし、存在を認められていないんです。
要らない、子なんです」









僅かに崩れた微笑み







しかしそれでも、笑おうと努力し、手を差し出し続けている






カナデは、その言葉に自分を重ねた







何かを思ってしたのではない






気付いたら目の前の小さな人の子と、カナデ自身を重ねて見ていた








< 235 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop