魔王vs神王→私!?


『カナデくん、ごめんなさい』







うわごとのようにしか紡げなかった言葉を、カナデくんはしっかりと拾ってくれた







「・・・何のことについて言っているの?」







表情に宿った、不安と恐怖







カナデくんは、例に違わず私の心中をわかってくれている






それでもまだ知らぬふりを通すのは、カナデくんが一抹の期待を抱いているからなの?







『嘘についてだよ』








「嘘・・・?ふふふ、嘘ですか?
僕に嘘なんて通じないことをわかっていて言っているの?」







カナデくんの目がせわしなく動いていた







焦ってしまって、困ってしまって、どうしたらいいのかわからないのだと言っているようだった








『わかってるよ、もちろん。
だからこそ、もうそろそろ認めようよ・・・

嘘を吐いていたのは、私じゃない

カナデくん本人なんだよ』








「僕が、貴女に嘘を吐いていたと?」








そう言いたいんですか?








そう語るカナデくんの目は、いよいよ小刻みに震え始めていた









優しくて、弱くて、誰よりも寂しがり屋な彼は、縋るように私を見た









ねえ、僕を一人にしないで







カナデくんのように人の心は読めないけれど、そう言っているように思える










『私の嘘は、早くから暴かれてしまっていた

私が本当に欲しかったものが、何であるのか。
それにカナデくんは気付いた

気付いてもまだ、気付かぬふりを貫いた

カナデくんは、自分に嘘を吐いたの。
自分を、騙したんだよ』









カナデくんの眼にじんわりと滲む、涙








それはやがて、頬を伝い、床に零れ落ちた








「・・・っ貴女が今、何を考えているのか、わかりませんっ・・・!!」









カナデくんはまたひとつ、嘘を重ねた








「僕は、貴女が望むことは全部叶えてきました」










またひとつ









「貴女が、大好きで・・・
愛しているから」








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