魔王vs神王→私!?
第十七章
『え・・・?』
口から漏れだすのは、間抜けな声のみ
気が利いた言葉なんて、出るはずはなかった
「あれ、僕がなぜこんなことを言ったのかわからないって思っていますよね?
おかしいなあ、本当は分かっているはずなのに」
小首を傾げてそう言ってのけるカナデくん
認めたくない私の心情をわかっていながら言っているのだろう
確信犯なのだから、タチが悪い
「僕は、ユーリと僕の二人でずっといたかった
でもそれは叶わないらしい・・・
ならば、叶わないなら、もういっそ殺してほしいんです
ユーリは優しいからきっと、ずっと僕のことを忘れない
いつまでも僕が貴女の中で生き続ける」
幸せそうに笑いながら、カナデくんは私の頬に手を添え、再び唇を塞いだ
優しいキス
どこか悟ったようなそれは、触れれば壊れてしまいそうで
私は身動き一つとれなかった
「死というものは、いつか忘れ去られるからこそ怖い
ですが貴女が憶えていてくれるのなら
僕は死を甘んじていい」
そう言って、神は両刃の剣を私に手渡した
柄にキラリと光る紫色の宝石は、見ていると吸い込まれそうな魅力があった
「ほら、いくら僕でもここを、心臓を狙われれば簡単ですよ」
とん、と自らの胸を指さし、カナデくんはいつかのように
・・・カッターナイフを使った時のように
柄を握った私の手に、手を添えた
『あ・・・・』
生々しく蘇る、ヒトの皮膚を切り裂く感触
心地の悪い、触感
「・・・嫌なことを思い出させてしまっているようですね・・・
ほら、でも僕を殺してしまえばもう二度とこんな感情は湧きあがりませんよ?」
どれだけ殺してほしいんだろう
こんなにも一つの事柄を押すカナデくんは初めてで
私は押し黙るしかなかった