【短編】グラさん観察




私のグラさんへの視線に気付いた勘違いヤローは、グラさんの事を紹介し始めた。




「あぁ。コイツは、壱(いち)俺のサーフィン仲間で、よくつるんでるヤツ。

いつもグラサンかけて怖いんだけど、根は優しいヤツだから。


まぁ、俺には劣るけどな。そんで俺は………」




そのあと、ヒデさんという人は自分の事をベラベラ喋ってたけど、私の耳には届かなくて、その間ずっとグラさんを見ていた。




「あのさ、君話聞いてる?」



そんな事を言うヒデさんなんかそっちのけ。


だって貴方の話、興味ありませんから。





「俺の顔になんか付いてる?」



あたしの視線に気付いたグラさんが喋った。


「あっ、あの。グラ……壱さんは、いくつなんですか?」


任務を遂行することを思い出したあたしは、早速メアドをゲットすべく立ち上がった。



「あっ、俺?俺はぁ、フリーターくんだよ!!」



………ヒデさん。いや、バカヒデには聞いてません。



「俺は、大学生。今3年だな」


「えっ…そうなんですかぁ。ちなみに私も、大学生です。1つ下ですけど」


「でさぁ君、名前なんてーの?」



せっかくのいい雰囲気を、ヒデさんは見事にぶち壊してくれる。



「美佐です」


「へぇ。じゃあ君は、ミサリンだね」


「リアルに止めてください」


「冗談に決まってんじゃん。俺の事はヒデでいいからね。よろしく、美佐ちゃん」



「俺は、壱でいい」



あらま、壱ったら照れ屋さんなのかしら。


私的には、グラさんの方が呼びやすいんだけどな。



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