土方歳三と運命の人~沖田総司と運命の駄犬 番外編~


しばらく経った夜。




総司が、縁側で、ボーッと空の星を眺めていた。




土方「何やってんだよ。ん?酒?お前、一人で・・・って珍しいな。」




俺は、横に座り、お猪口を取ると、総司が、酒を注いでくれた。




土方「おっ。すまねぇな。」





沖田「はぁ・・・。こんな鬼のどこが良いのかな?僕には、さっぱりわからない。梓の目は節穴だ。」




土方「は?何だよ。」




沖田「僕、梓に求婚したら、断られました。」





土方「ブハッ。きゅ、求婚!?」




俺は酒を噴いた。




沖田「はい。梓ごときに、振られました!」




土方「そうか・・・辛ぇな・・・。まぁ、呑め!」




沖田「はい。まぁ、僕が用意した酒ですけどね。」





しばらく、二人で呑む。




総司が用意した酒を、二人で飲み干した。





すると、総司が、立ち上がった。





沖田「付き合ってくれてありがとうございました!次は、土方さんの番ですよ?」




土方「俺は、まだ・・・。」




この気持ちを伝えるって決めてない。




沖田「新選組副長が、そんなんで、どうするんですか!ったく世話の焼ける人ですね。」




土方「それをお前が言うか?お前にだけは、言われたくねぇ。」





沖田「ハハハッ。もう、そんな冗談を言うんだから!」





冗談じゃねぇんだけどな・・・。




沖田「さて、僕は、もう寝ます。酒を飲んだら眠くなっちゃった。それでは、お休みなさい。」





土方「あぁ。」





俺は、総司をその場で見送り、夜空を見上げる。




総司が求婚・・・。




アイツ、そこまで、本気だったか・・・。





俺は、どうしたいんだろうな・・・。






俺には、色恋で悩んでる暇なんてねぇ・・・。




それに、俺じゃ、梓を幸せにしてやれねぇ。




それどころか、梓を1人にしてしまう。






幾度となく、未来を変えようとしてきたが、未来が変わった事は無かった。





もしかしたら、未来へ行かずとも同じ道に行けたのでは?と思ってしまうほどだ。





このままだときっと、新選組の面々の殆どが、天寿を全うせずに、この世を去る。





その時、梓は、どうする?




総司によると、嫁に出すどころではないほど、何も出来ない。どこぞの姫君かと今でもよく怒鳴っている。






先日、総司が、風邪で倒れたときの粥を見ても一目瞭然だ。






あんなのでは、この時代では、生きていけない。




それこそ体を売らなくてはいけなくなる。






そんな事は、させたくない。







でも・・・。






頭では、解っているのに、心が、苦しくなり、次の言葉が出て来ねぇ・・・。




本当は、俺の女にしたいんだ・・・。





でも、それは、新選組副長として生きる俺には、邪魔な者だ・・・。





新選組副長が、女の事で、ウダウダ言ってて、どうする・・・。






諦めなきゃいけねぇのに、諦められねぇ・・・。





厄介過ぎだろ。




俺は、ため息を一つ吐いて、空を見上げた。
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