土方歳三と運命の人~沖田総司と運命の駄犬 番外編~
二人で、屯所に戻り、書簡を片付けるも、先ほどの梓の姿が、頭から離れない。
すると・・・。
バタバタバタッ!
足音が聞こえる。
はぁ・・・。やっぱり来たか・・・。
スパーーーン!
襖が、乱暴に開けられて、立っていたのは、怒りを露わにした総司だった。
土方「お前なぁ・・・。襖は・・・。」
注意しようとすると、総司は、その言葉を遮った。
沖田「そんな事、どうでもいいんですよっ!どうしてですか!?」
土方「何がだよ・・・。」
総司が怒っている理由は解っている。
沖田「惚(とぼ)けないで下さい!梓の事です!なぜ、梓に自分の側にいろと言ってあげないんですか!二人は、想い合っているのにっ!」
土方「お前には・・・。」
沖田「関係無いとでも言いたいんですか!ありますよ!僕は、梓に求婚したんだ!梓の僕の求婚を断った理由は、あなたを・・・土方さんの事を好いてるからだって言ってた。土方さんだって、梓に惚れてるはずだ!それなのに・・・。」
土方「勝手に決めんなよ。」
沖田「どこまで惚ける気ですか?だったら、僕が、幸せにしますよ!ここにいろって・・・っ。」
土方「止めろっ!!!」
俺が、怒鳴ると総司が止まった。
俺は、総司の肩を掴んだ。
土方「お前じゃ・・・幸せにしてやれねぇんだよ!」
沖田「は?何、言ってるんですか?そりゃ、僕は、人としてまだまだ未熟者で・・・。」
土方「そうじゃねぇ・・・。そうじゃねぇんだ・・・。」
沖田「何、隠してるんですか?」
俺は、総司の姿で未来に行ったことを話した。
沖田「はぁ?では・・・梓が言ってる沖田先輩って土方さんの事だったって事?」
土方「あぁ。それに、俺らじゃ、いずれ梓は、独りでこの時代で生きなきゃならなくなる。」
総司はその意味を察した。
沖田「では、近藤先生でも良いじゃないですか・・・。梓の事、娘のように思ってるし・・・。」
俺が、何も言わないのを見て、総司が、俺の胸ぐらを掴んだ。
沖田「先生も・・・?なんで、未来を知ってて変えないんだよっ!!!!何してるんですかっっ!」
俺は、胸ぐらを掴んでいる総司の手を払った。
土方「やったが、全く変わらねぇんだよっっ!!!何度やっても!何をしても・・・っ。何度・・・っ。」
悔しさで、言葉が詰まる。
沖田「そんな・・・。」
総司がペタリと座り込んだ。
沖田「先生の事は、後で、話すとして、梓は・・・梓の居たところは、梓一人でも生きていけるんですか?」
土方「あぁ・・・。」
俺は、未来の事をかいつまんで総司に話した。
沖田「そっか・・・。だったら、梓は、帰った方が良いですね・・・。梓が、ここで独りになっちゃったら、体を売る事でしか生きていく道は無さそうだし・・・。こんな時だけ鬼になって・・・おなごの事は、軽くあしらっても、梓の事は、とても、大事にしてるんですね・・・。」
総司は立ち上がった。
沖田「土方さん・・・。梓の事は、僕も協力してあげます。その代わり、絶対、近藤先生を助けて下さい!」
土方「そのつもりだ。」
そう言うと、総司は、フッと笑い、部屋を出て行った。