土方歳三と運命の人~沖田総司と運命の駄犬 番外編~

それから、しばらくした頃、私は、沖田先輩に誘われて、寺の境内に来ていた。




沖田先輩は、何か様子が少しおかしい。





ソワソワしているような感じだ。





沖田「梓、聞いて欲しい事がある。」




私達は、池のほとりに座った。




真剣な顔の沖田先輩が、何かを差し出した。




梓「櫛?」




沖田「これを受け取って欲しい。」




梓「はい。」




受け取ろうとしたら、沖田先輩は、櫛をヒョイと顔の所まで上げた。




沖田「やっぱりわかってないみたいだね?僕、求婚してるんだけど。」




梓「球根?お花の?」




すると、沖田先輩は、最初の出逢った頃の時にしたような大きなため息をついた。




沖田「僕と夫婦になって欲しい。僕の妻になって欲しいって意味だけど。」




梓「妻?」




沖田「うん。」





梓「って、お嫁さん!?」





沖田「そう。」





梓「なるほど・・って、えぇぇぇぇぇぇ!????」




腰が抜けそうなんですけど!




梓「なっ!ど、どうして、お、お、沖田先輩が私と?」




沖田「それは・・・。」




沖田先輩が、少し赤くなった。





沖田「・・・梓の事を好いてるからだよ。」





沖田先輩は私を見つめて、櫛を差し出した。





沖田「もう一度言う。僕は、梓が、好きだよ。僕のお嫁さんになって欲しい。これを受け取って欲しい。」




私は、目の前に差し出された櫛を見つめた。






櫛には、団子と犬の絵が描かれていた。





私は、ギュッと自分の手を握りしめた。




沖田先輩は、真剣に私にプロポーズしてくれた。





私もちゃんと言わなきゃ。





私は、頭を下げた。





梓「ごめんなさいっ!私・・・好きな人がいます。」




沖田「それって、土方さん?それとも、前に言ってたシンとかいう役者?」




梓「ひ、土方さんです!」





沖田「梓って、趣味悪いんだね・・・。あんなおなご好きのどこが良いの?」




梓「土方さんは、優しいし、カッコイイし・・・。」




土方さんの好きな所を言っていると、沖田先輩は、ため息をついた。




沖田「もういいよ・・・。まぁ、梓も他のおなごと一緒で、あの色気にやられたんだろうね・・・。はぁ・・・。でも、こればっかりは仕方ないか・・・。梓ごときが、僕を振るなんて生意気だ。」




そう言って、沖田先輩は、私の頬をつねった。




梓「ご、ごめんなさい!でも、私を好きって言ってくれてありがとうございます!」




沖田「夫婦にはなれないけど、僕は、梓の世話役には変わりないから、面倒かけないでね?」





ニコリと黒い笑みで言われた。




これって好きな人に向ける顔じゃないよね・・・。うん・・・。





なんだか、信じられないよ。




私は、「はい。」と答えた。




その帰り道。




沖田先輩は、普段と変わらず、いつも通りの先輩だった。




そして、部屋に入ると、沖田先輩は、真剣な顔をした。




沖田「梓。自分の想いを土方さんに告げるんだよ?」




梓「え・・・。いや・・・でも・・・っ。」




そんな勇気出ないよ・・・。





すると、沖田先輩が、優しい笑顔で、私の頭に手を置いた。





沖田「大丈夫だよ。あの鬼も梓の前では、角が無くなるんだから。甘々の菓子のようだし。今までの土方さんを思い出してみなよ。あんなにおなごに何かしてあげる土方さんなんて、見たことないんだからさ。」




確かに優しい・・・。




私は、決心した。





梓「私・・・。告白します!土方さんに自分の想いを伝えます!土方さん、私に運命のおなごって言ってくれたんです!」





沖田「あの人、そんな事、言ったの!?よくそんな恥ずかしい事、言えるな・・・。さすが・・・。でも、まぁそれが答えだよ。頑張りなね?」





梓「はい!」




そう言うと、沖田先輩は、少し寂しそうな顔で、私の頭を撫でて、部屋を出て行った。
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