土方歳三と運命の人~沖田総司と運命の駄犬 番外編~
私は、土方さんを呼び出した。
梓「土方さんっ!あの・・・っ・・・お話が・・・。」
少し雰囲気の良い河辺だ。
梓「ひ、土方さんに、言いたいことがあるんですっ!」
何かを察したように、土方さんの眉が寄り、眉間に皺を寄せる。
梓「私!土方さんが、好きです!それで、出来れば、私と付き合って・・・。」
「下さい」と言おうとする前に、口に手を置かれて、言葉を遮られた。
土方「言うな・・・。」
梓「え?」
どうして・・・?
苦しそう顔をして、グッと何かに耐えている。そんな感じだった。
私の口元に置かれた手は、冷たく、小刻みに震えていた。
土方「俺は・・・俺は・・・。」
土方さんの顔が、何かを迷った顔から、決心したような顔つきになる。
土方「俺は、お前の気持ちに応えれねぇよ・・・。」
梓「でも・・・私の事、運命のおなごって・・・。」
一瞬だけ優しくなった土方さんの顔はすぐに怖い顔に戻ってしまった。
土方「はぁ・・・。お前なぁ、俺のこと、他の奴らから聞いてるんだろ?俺は、おなごなら誰でも良い。ここへ、来たのが、お前だったから、お前が、運命のおなごって事だ。別の奴が、来ていたら、そいつがそうなってた・・・。」
誰でも良かったって事?
涙がこぼれそう・・・。
必死に堪えていたら、土方さんは、思い出したように軽く言った。
土方「あぁ。そうだ・・・。お前、平成の世に帰れる事になったぞ。」
梓「え?」
土方「忠兵衛が、占い屋忠兵衛が見つかった。で、お前は帰れるんだとよ・・・。良かったな?」
ヤダよ・・・。
土方さんと離れるなんて・・・。
梓「私・・・。土方さんの側に・・・。」
側にいたい・・・。
そう言おうとしたら、決定的な一言を言われた。
土方「梓、お前の存在は、俺には、邪魔なんだ。」
梓「っ!・・・邪魔・・・?」
土方「あぁ。だって、そうだろ?おなごとしてここでやっていけねぇだろ?世話しなきゃなんねぇ。」
土方さんは、私の事、そんな風に思ってたの?
梓「訓練します!だから、ここに・・・っ」
私は、どんな形であれ、土方さんの側にいたかった。
すると・・・。
土方「グチグチうるせぇ!!!」
怒鳴られた。
土方「ここは、元々、女人禁制なんだよ。それを、占い屋忠兵衛が見つかるまでは、置いてやったんだ。未来に帰れるなら・・・平成に帰れっ!」
梓「そ・・それが、土方さんの気持ちですか?土方さんにとって、私は・・・。」
土方「邪魔者以外の何者でもねぇ・・・。」
邪魔者・・・。
ここまで言われているのに、私は、まだ、すがりついた。
梓「そんな・・・っ。・・・未練がましいかもしれません・・・。でも、私は、土方さんが好きです。きっと、未来に帰っても、この気持ちは・・・っ。この気持ちは・・・っ。」
私の目からは、いつの間にか、涙が溢れて流れ続けていた。
土方「泣く女ほど、うざったい物はないな・・・。」
その時、私は、気付いた。
土方さん、わざと、酷い言葉を選んで、私に言ってる・・・。
土方さんは、手をずっと握りしめて、苦しそうな顔をしていたから・・・。
きっと平成の時代に私を帰そうとしてくれてるんだ・・・。
普通に言ったら、私は帰りたくないって言うから・・・。
幹部の人達に、ついて来てもらって、占い屋 忠兵衛を一緒に探してもらってたんだもん。
土方さんは、その私の願いを叶えようとしてくれてるんだ・・・。
だったら、少しだけ望みを持っても良いよね?
梓「確かに、占い屋忠兵衛が見つかるまでって言ってました・・・。私・・・帰ります。土方さん。これだけは言わせて下さい。私は、あなたが、大好きです。私は、あなたを運命の人だって思ってます。だから・・・だから・・・もし、今度、会えたら、その時は・・・。」
そう言うと、土方さんは、少し優しい笑みを浮かべて、苦しそうに私の頭を撫でた。
そして・・・。
土方「お前には、本当に、感謝している。梓、礼を言う。元の所で、達者に暮らせよ?」
やっぱりそうだ・・・。
いつも、私に優しくしてくれる土方さんだ・・・。
だったら、私が、帰りたくないなんて言っちゃダメだ。
私は、笑顔を作り、ハイと元気に答えた。