土方歳三と運命の人~沖田総司と運命の駄犬 番外編~






近藤さんと総司が、向かいあって座る。




俺は、近藤さんの横に座った。



沖田「近藤先生、僕、何か、ヘマをしちゃったんでしょうか?」




近藤「いや。お前は、本当に、良くやってくれている。梓は、無事だったのか?」





沖田「はい。目を離して、すみませんでした。」




近藤「ずっと、屯所じゃ、息も詰まるだろう。また、どこかに連れて行ってあげなさい。」




沖田「はい・・・。」





近藤「ところでだ。本題に入る。」




沖田「はい。」




近藤「総司。お前、恋仲がおるのか?」



恋仲の事を、触れられて、総司は、少し、動揺している。




総司「はい・・・。」






近藤「お前達は、コソコソと会っているそうではないか・・・。」




沖田「あ・・・。」




近藤「どんな、娘さんなんだ?」




沖田「お医者様の娘さんで・・・。名前をお美代さんと言います。」





近藤「そうか・・・。総司、よく聞け。相手は、普通のご家庭の娘さんだ。でも、お前は、壬生浪士組の副長助勤・・・。お前には、これから、色々と働いて貰わねばならない。」




沖田「ど・・・。どういう事ですか?」




近藤「別れなさい。」





沖田「っ!・・・ちょっと、待って下さい!確かに、お美代ちゃんとは、立場などが、違います!でも・・・。ちゃんと、勤めはします!なので、お願いします!お付き合いを許して下さい!お願いします!」




総司は、必死に頭を下げている。




俺も、近藤さんも、総司のこんな姿を見たこと無い。




本当なら、そのおなごと夫婦になって、幸せになればいいと思う。




だが・・・。




総司は、壬生浪士組の副長助勤。




しかも、色々、重要な案件も任せている。



総司を失うことは痛手だ。



同じ思いなのか、近藤さんも、苦い顔をしている・・・。




近藤「総司・・・。お前の、お役目を・・・立場をよく考えろ。お前のやっていることを、相手のご家族は、納得出来るか?我々のお役目は、なかなか、理解されがたい・・・。」




総司は、近藤さんの顔を見つめて、近藤さんの気持ちを汲み取った。



総司の顔が、悲しみで歪む。



沖田「そうですね・・・。僕は、ここが・・・一番大切です。それに、普通の家のお美代さんを・・・巻き込む訳にはいきません・・・っ。」



近藤「その娘さんには、こちらから、良いところへ嫁げるよう手配する。他の人の奥方になった方が、お前も諦められるだろう?」



総司は、苦しそうに、頭を下げた。




沖田「っ。・・・お願い・・・します・・・っ。」




畳に、額を付けて、小刻みに、震えている。




泣いてるのか・・・。




沖田「っ。・・・うっ・・・うっ・・・うっ・・・。」




近藤「総司・・・。お前は、ここには、無くてはならない人間だ。わかってくれて良かった・・・。今は、無理かもしれんが、お座敷遊びでもして新しいおなごを見つけるのも良い。」





土方「おなごは、星の数ほどいる。いつか、お前の事を受け止めてくれるおなごがいるはずだ。」





そう言うと、総司は、一礼をして、部屋を出た。




近藤「とし・・・。わかっていたが、苦しいな・・・。」




土方「あぁ・・・。でも、総司なら、いつか、わかってくれる・・・。それに、きっと、総司の事を、わかってくれるおなごもいる・・・。」




近藤「まぁ、今、梓も側にいるしな。あの二人は、似合いだし、仲も良い!俺は、あの二人だったら・・・。」




土方「梓はっ!梓は・・・。」





いきなり、声を荒げた俺に、近藤さんは驚く。




土方「梓と総司は・・・そうなったら、面白いな・・・。」




近藤「だろう?良いと、思うぞ!総司も早く気付けば良いんだがな!」




土方「そうだな・・・。じゃあ、俺は、そろそろ・・・。」




近藤「あぁ・・・。」





俺は、近藤さんの部屋を出た。





俺・・・今、どんな顔してんだ?




胸が、潰れそうに、苦しい・・・。




総司と梓が、くっつくところを、想像するだけでも、胸に黒い物が広がる。





土方「はぁ・・・。俺が、こんな気持ちになるなんてな・・・。」





俺は、部屋に戻り、趣味の俳句を詠んだ。




『しれば迷い しなければ迷わぬ 恋の道』




土方「俺は、何やってんだよ・・・。」





その俳句にボツの印を付けた。
< 44 / 121 >

この作品をシェア

pagetop