土方歳三と運命の人~沖田総司と運命の駄犬 番外編~





次の朝、部屋の前に、梓の気配を感じて、襖を、開けると、梓が立っていた。




気まずそうに、立っている。




何か、あったか。






梓「お、おはようございます。」




土方「あぁ・・・。おはよう。お前、ちょっと、中に入れ。」




俺は、梓を中に部屋の中に入れる。




土方「こんな、朝っぱらから、どうした?」




梓「えっと・・・。」





何か、あったか・・・。




だったら、少し、気分を、変えてやるか。




土方「ここで、少し待ってろ。」




俺は、部屋を出て、朝餉を取りに行く。




大部屋に行くと、朝餉が並んでいる。





俺は、隊士に、部屋で食べることを伝えた。




土方「悪ぃ。もう、一人分、多めで、くれねぇか?」




隊士「はいっ!」




二人分の朝餉を持ち、部屋に戻る途中、総司に会った。




土方「総司、梓だが、俺の部屋にいる。」




少し、驚いたようだったが、「はい。」と一言言い、大部屋に向かっていった。




土方「あいつ・・・。無理してんな・・・。」




無理に、笑っている総司を見ると、胸が痛んだ。




俺は、部屋に戻った。




土方「腹、減ってるだろ?ほら。」






梓に、多めの方の朝餉を渡す。




梓「あ、ありがとうございます。」




梓は、朝餉を受け取って、動きが止まった。




俺の方を見て動かない。




あぁ・・・。そういうことか。




多分、俺が、食べ終わるのを待っている。




土方「一緒に、食うぞ。」




そう言うと、梓は、嬉しそうに、飯を食べ始める。





ものすごい勢いで、飯を頬張る梓に、笑いが込み上げる。




土方「ぷっ。よっぽど、腹減ってたんだな。」




梓は、真っ赤になって、残りをかっこんだ。




朝餉を済ませると、梓が、食器を片づけ始めた。




土方「ここで待っとけ。」




俺は、梓から、食器を受け取ると、お勝手に返しに行った。





これで、少しは、気持ちが、変わったか?




俺は、部屋に戻り、梓の前に座って、梓の顔を覗き込む。




土方「どうした?」




梓「あ。」




梓は、意を決したように口を開いた。




梓「ちょっと、沖田先輩の側に、居づらくて・・・。」




土方「こっぴどく怒られたか?」




総司に、八つ当たりされたか?




そう思ったが、違うようだ。




梓「ちょっと、孤独を感じてしまっただけです・・・。ホームシックなのかもしれません・・・。帰りたいのに、帰り方も、占い屋もわかんないし・・・。私が、ここにいる意味なんて無い・・・っ。」




梓はそう言うと、涙を零す。




梓・・・。





俺は、梓を抱きしめた。





梓「え・・・?」




土方「梓・・・。よく聞け・・・。お前が、ここに、来て、俺は、お前に助けられた・・・。それは、昨日、お前にも話したよな。総司だって、昨日、きっと、お前に、救われてる筈だ。」




梓「沖田先輩も?」




土方「あぁ・・・。」




俺は、梓に、総司が、恋仲と、別れた話を話した。




梓「そんな・・・。」




梓は、苦しそうに、思い詰めている。




土方「総司の事、元気にしてやれるのは、お前だと、俺は、思っている。頼めるか?」




そう言うと、梓は、俺の顔を覗き込む。




その顔を見ていると辛いが、総司を元気付けられるのは、あいつが、自分を出せる梓だけだとも思う。




すると、梓は、俺の腕の中で、敬礼をする。




梓「はい!沖田先輩の事、立ち直らせて、みせます!」




俺は、色々な気持ちが入り混じり、梓をもう一度、抱きしめた。




すると、梓の腕が俺の背中に回り、一度、ギュッと抱きしめて離れた。





梓「土方さん!ありがとうございました!行ってきます!」



土方「あぁ。頼んだ。」





梓の頭に、一度、ポンと手を置いた。





梓は、礼をして、部屋を出ていった。





弟の為には、今は、梓が必要だが、自分自身、苦しい・・・。





黒い心を振り切るように、稽古場へ向かった。
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