土方歳三と運命の人～沖田総司と運命の駄犬 番外編～

梓は、決意したような目で、俺を見た。




梓「土方さん。前に、私が、アイドルのシンが、チョー好きって言ってたじゃないですか？」




土方「あ？あぁ。」




梓「ファンクラブに入ってて、ライブのチケット当たったんです。」




土方「へぇ。すごいじゃねぇか。」




梓「でしょ？で、ライブの日が、ちょうど、ここに来る次の週の日曜日だったんです。」




土方「そりゃ残念だったな。」




そういや、梓は、未来で、ライブがどうとか、喜んでいたな・・・。





梓「はい・・・。私、すぐ、帰れると、思ったから・・・。」




そう言いながら、梓は、ハッとして、少し考えている。





梓「土方さん・・・。」




土方「あ？」




梓「土方さんだったんですね・・・。あの時代の沖田先輩は・・・。」





気付いた・・・。




梓が、やっと・・・。



やっと・・・。





俺は、嬉しくなり、梓を抱きしめた。




梓「え？」




土方「やっと・・・っ。やっと、気付いたか・・・梓・・・。この時を、どれだけ待ちわびたか・・・。」




梓「ちょっと待ってください！じゃあ・・・本当に、沖田先輩なの？」




土方「あぁ。騙していて、悪かった。ずっと、お前に、悪いと思ってた・・・。すまない。」




俺は、“騙してここに連れて来た”という事以外、全て話した。




正直に、言って、これ以上、傷付ける事もない。



梓「じゃあ・・・。占い屋は、無いんですか？」




土方「あぁ。すまない。もし、戻れないなら、お前の事は、俺が必ず、守る・・・。」





梓「そんな・・・。じゃあ、私は、ずっと、この時代に、いなきゃいけないの？酷い！すぐ、帰れるって、言ったじゃん！『すぐそこだから』、みたいな言い方してたじゃんか！酷いよ！酷い・・・っ。」





土方「すまない、梓・・・。占い屋は、探していくつもりだ。」




梓は、俺の腕の中で、泣いている。




俺から、離れようと、もがく梓を、離さなかった。




離したらきっと梓は、また、どこかへ飛び出してしまう。




しばらく泣いた後、梓が、不意に、顔を上げた。




梓「土方さん・・・。」



梓は、しっかりした視線を俺に向けた。



どんな、罵倒も受け止める。




それは、俺が、ここへ連れて来たせめてもの償い。



しかし、梓が、口にしたのは、罵倒でも、恨み言でもなかった。




梓「土方さんが、ここにいるって事は、取り憑かれた物は祓えたんですか？」





コイツ・・・。全てがわかっても、俺の心配か・・・。




土方「あぁ。この通り、ピンピンしてる。ありがとうな、梓・・・。」





梓「それなら良かったです。」





梓が微笑んだ。




その微笑んだ顔を見たとたん、勝手に体が動き、梓に口付けていた。




土方「梓・・・ありがとう・・・。お前のおかげで、俺は、夢を叶えて、ここにいる・・・。まぁ、まだまだ、これからだが、お前には、礼を言っても言い足りねぇくらいだ。お前は、俺にとって、運命のおなごだ・・・。」




梓「土方さん・・・。」





自分の中の想いをぶちまけると、梓は、目を見開き、赤くなっていった。




梓のその顔を見ていると、触れたくて仕方ない。



俺は、ゆっくり、ゆっくり、唇を合わせた。




すると、胸の中で、梓は、力が抜けた。




梓「のぼせる・・・。」




そう言うと、梓は、近くにあった酒を、一気に飲み干した。




梓「あれ？」




梓の顔が一気に、首まで赤い。




梓「ゲホッ。ゲホッ。」




土方「お前！それは酒だ！」




梓「えぇぇ？」




梓は、そのまま、ぶっ倒れた。




土方「おい！梓？おい！」




揺さぶっても、起きねぇ。




酒で、目ぇ、回してるだけだと思うが、一応、山崎に、診せておくか。




俺は、梓を、抱き上げて、山崎の所に急いだ。