土方歳三と運命の人~沖田総司と運命の駄犬 番外編~
俺も出ようとしたら、近藤さんに呼び止められた。
近藤「とし、悪いが、伊東殿に、ここの案内と隊務などの事の説明お願いしても良いか?これから、会津藩邸に報告をしなくてはならない。」
土方「あぁ。」
伊東「土方さん、よろしく頼む。」
土方「じゃあ、行きましょうか?」
俺は、一通り屯所を案内した後、俺の部屋に、入れて、隊務の事などの説明をした。
土方「これで、説明は、大方、済んだが、他に・・・。」
スパーーン!
いきなり襖が開き、顔面蒼白の梓が、飛び込んできた。
梓「土方さんっ!助けてっ!」
そして、俺に抱きついてきた。
その後、すぐに、総司が、鬼の形相で、入ってきた。
土方「お前らなぁ・・・。ちったぁ、静かにしろよ。」
沖田「はぁ・・・。はぁ・・・。すいませんねぇ。梓を渡してもらえますか?」
俺が、梓をチラリと見ると、梓は、怯えて、俺を見返してきた。
梓「土方さん・・・。」
俺は、安心させるように、ギュッと、腕に力を入れた。
土方「総司。もう止めておけ。元はと言えば、お前が、梓の貰った菓子を横取りしたんだろうが。今、伊東さんと大事な話をしてんだよ。」
伊東を見ると、ネットリした目で、梓を見ていた。
梓は、俺を掴んでいる腕に力を入れた。
梓「あ・・・。」
俺は、安心させるように、梓を、優しく私を抱きしめ、ポンポンと背中を軽く叩いた。
どうせ、隠してもすぐバレるだろう。
俺は、梓を伊東に紹介した。
土方「梓、紹介する。伊東さん、こいつは、寺井 梓だ。一応、総司の小姓だ。で、この人は、伊東 甲子太郎さんだ。」
梓「伊東 甲子太郎さん・・・。初めまして。寺井 梓です。」
伊東「伊東 甲子太郎と申す。宜しく。」
梓「宜しくお願いします。」
挨拶が済むと、俺は、梓を離して、総司に目配せをした。
梓をこれ以上、伊東に近づけるな・・・。
その意をくみ取ったのか、総司は、コクリと頷いた。
土方「もう出ていけ・・・。」
沖田「はーい。ほら、梓、行くよ?」
総司が手を差し出しても、梓は、俺にしがみついたまま・・・。
沖田「ほら!もう、何もしないからこっちおいで。」
疑いの目をして、梓は俺の着物を握り直す。
沖田「はぁ・・・。何もしないからおいでよ。その代わり今からあの店に並んでもらうけど!早くして!売り切れる!」
俺は、安心するように、梓の頭を撫でた。
土方「行ってこい。後で、お前に渡したい物が・・・。」
沖田「ほら、行くよ!」
総司は、俺の言葉を遮り、梓を引きずって出て行った。
何なんだ。ったく。
伊東「くくくっ。賑やかな屯所ですね?」
ごもっとも。
これじゃあ、寺子屋じゃねぇか。
土方「まぁ、ガキなのは、あの二人だけだ。」
伊東は核心を突いてきた。
伊東「あの子は・・・おなごですか?」
黙っててもいつかバレる。
俺は、真実を言う。
土方「あぁ。まぁ、幹部しか知らねえ事だ。規律が乱れるからな。」
伊東「何故、あの娘を置いてるのですか?」
俺は、総司が助けた時の事を話した。
土方「まぁ、そういうことだ。これは、幹部のみの内密事で頼む。」
伊東「もちろんです。それにしても、可愛らしい娘だ・・・。あの二人は、恋仲か兄妹のようだ。」
土方「まぁ、小姓を頼んでるくらいだから、仲は、悪くはない。」
伊東「そうですか。へぇ・・・。」
俺は、その時の伊東の厭らしい目の奥が、怪しく光ったのを見逃さなかった。
土方「伊東さん達の部屋だが、用意させた。今、案内させる。」
俺は、小姓の前川を呼び出した。
土方「前川、伊東さん達を部屋に案内してくれ。」
前川は、頭を下げた。
伊東「では、土方さん?これからよろしくお願いしますね?」
土方「あぁ。こちらこそ。」
そう言うと、伊東は出て行った。