貴公子？いいえ、俺様男です

ヘタレです

9月下旬

"アトリエ シュウ"に、秋冬商品が続々と入荷してくる。

販売担当の里菜ちゃんと、黙々と並べる…いや、並べたいのだが、

「きゃーっ！
シュウさん、このセンタークロス…
素敵です〜

三色展開なんですね〜
どれにしよう？」

「………」

ガサッ、ゴソッ、ガサッ…

「わぁーん、クッションもそろうんですね〜！迷っちゃう〜〜」

「………」

ガサッ、ゴト、ゴト…

「シュウさん！
ゴールドのテーブルセンター、買ってもいい？」

「却下。お客さんが先」

「そんなぁ…売り切れちゃいますぅ」

ガサッ、ゴソッ…

「売れるために店頭に置いてるからね？
手を動かしてね」

「…はぁーい」

…シュン

(あ…耳がたれた)

里菜ちゃんは、うちで扱う輸入雑貨が大好きで、"アトリエ シュウ"の常連さんだった。
縁あって、大学を卒業した今も、うちで働いてくれている。
小柄な女の子で、ビーグル犬みたいだ…と、常々思っている。

「あー…わかった、わかった。
店頭に置いて、三日経ったらお分けしますよ？お客さま」

「きゃーっ！
シュウさん、愛してます‼︎」

むぎゅう…

抱きつかれた……おい、おい、、、

「離れろ。犬臭くなる」

「へへへ…」