貴公子?いいえ、俺様男です
都ちゃんを、助手席へ誘導しながら、触れるか触れないかくらいの距離で、エスコートする葵をぼんやり眺めた。

あんな風に自然に振る舞える葵に嫉妬した。
と同時に、触れたら壊れちゃいそうなどと、都ちゃんのせいにして、実は拒まれ傷つきたくない自分の弱さに気付かされた。

ウジウジとしていても、時間は待ってくれない。

・・・・・

「シュウさん、
荷物が積み終わりました」

11月下旬

館内のアレンジを年間契約している京都のRホテルへ向けて、ワゴンを出発させた。

これから訪れる、クリスマスから年末にかけて、俺のアレンジを見て幸せな気分になってくれればいい。

彼女のはにかんだ笑顔を思い浮かべながら館内を飾り付けた。

作業を終えて窓の外を見ると、すっかり暗くなっていた。

「みんな、お疲れさま。
疲れたろ?ゆっくり休んでくれ」

アレンジを手伝ってくれた弟子たちに小遣いを渡し、俺は一人タクシー乗り場へ向かう。

コツ、コツ、コツ…

カツン、カツン、カツン…

「………」

「………」

「…里菜ちゃん」

振り向くと、弟子たちと食事に行ったように見えた里菜ちゃんだった。









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