貴公子?いいえ、俺様男です
「………」

さっきから、黙ったままの里菜ちゃんが

「シュウさん、お花の方はどうするの?
私、お花は全く分からない」

よいしょ…と、里菜ちゃんが座っている椅子の前に、パイプ椅子を置き座る。

「それなんだけどね、早川 達也に任せようと思うんだ。達也には、里菜ちゃんもあったことあるよね?」

早川 達也は、俺の弟子だ。

弟子の中でも、アレンジのテイストが俺に近い。
物腰も柔らかい彼なら、フラワーアレンジ教室の方もやって行けるだろう。

この話をした時、ものすごく驚き『無理です』と遠慮する彼を説得中だ。

「だから、里菜ちゃんはこれまでどおり、輸入雑貨メインの販売を担当してほしい」

里菜ちゃんの漆黒の瞳が揺れてる。

「シュウさん、いつパリへ行くの?」

「来月の中旬に、二週間くらい行ってくるよ。あと一ヶ月あれば、今より詳細が決まるだろうから、その打ち合わせ」

「自信ないな…今まではシュウさんが近くにいてくれたから、私なんかが出来たんです」

そう言った里菜ちゃんは、泣きそうだ。

「今だって、俺…店に時々しか顔を出してないよ。でも、里菜ちゃんはやってるじゃない?」

里菜ちゃんの頭にポンと触れる。







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