貴公子?いいえ、俺様男です
彼女が、退職届けを残して消えてしまったこともショックだったが、失恋したという事実も同じくらいショックだ。

里菜ちゃんには、彼氏か好きな人がいたんだ。

とにかく、会って話を聞かないと。

すぐに見つかると思った彼女は、どこにもいない。

スマホは呼び出し音が聞こえるだけ。
メールは、いつまで経っても未読のままだ。

住所を頼りにマンションに行ってみたが、部屋を引き払った後だった。

それから、俺は仕事の合間を縫って、彼女が立ち寄りそうな場所を探した。

街中で、彼女が好みそうな飲食店を見つけると、迷わず入った。

きっと好みだろう趣味の雑貨屋など、何度も足を運んだ。




どこにいるんだ?




『いつか会えるのか?待っている』

と最後のつもりでメールを送った。

短いメールなら、スマホ画面上に表示されるだろうから。

この一文、読んでくれ!

願いを込めて送信した。




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