強引な次期社長に独り占めされてます!
「こいつの彼氏呼ぶ。どーせイブに会えないから憂さ晴らしに俺ら捕まったんだしな。ただ、驚くなよ?」

驚く?

そして、主任は通話が繋がった相手にとんでもないことを言い始めた。

「もしもし? ああ。今、会社の近くの【夕月】って小料理屋にいるんだけど。一時間以内に迎えに来ないと、酔い潰れた彼女を襲うよ?」

……人の目の前で、なんて事を言っているんですか、あなたは。

悪戯を仕掛ける悪ガキの様な笑顔で主任は言うだけ言うと、何やら相手が叫んでいるうちに通話を切った。

本当に“ガキ大将”そのものじゃないか。

「呆れた……」

「俺が野間を担いでいくわけにもいかねえだろ」

そうして待つこと30分後、現れた人にポカンとする。

「専務?」

ブランドもののコートにきっちりネクタイ、恐らく手縫いであろうスーツに身を包んだ人は、間違いなく我が社の専務取締役。

ただ、いつもきれいにセットされている髪が今は乱れ、眼鏡が白く曇っている。

「お前、何なんだあの電話は……!」

そう言って近づいてきて、私の存在にハッと立ち止まり、眼鏡をずらすと主任を睨む。

「あ。うちの部下の松浦。大丈夫だよ、口は堅いから」

平然と主任は言っているけど、野間さんの彼氏が専務?

専務っていくつだっけ? えーと、確か社長の息子って事くらいしか知識がない。

だいたい、アットホームな事務所はともかく、重役なんて雲の上の人だから!
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