強引な次期社長に独り占めされてます!
その専務が近づいてくる。それを見上げてポカンと口を開けた。

めちゃくちゃでっかい。

「……聖子がご迷惑をおかけしました」

せ、聖子? 聖子って、ああ野間さん! 思い出してから、深々と頭を下げる専務に、あたふたと手を振る。

「そんな、いつもお世話になっているのは、わた、私の方ですから……!」

「松浦。とりあえずこっち来い」

あ、ああ。そうですね。

主任に呼ばれて慌てて席を移ると、専務が小上がりに上がってきて、野間さんにそっと触れた。

何だか、壊れ物みたいに野間さんに触れる人なんだな……そう思って主任を見ると、主任もニヤニヤとふたりを眺めている。

「手間かけたな」

「そう思うなら、イブくらい空けておいてやれよ」

「……仕事だ。仕方がないだろう」

専務はブツブツ言いながら野間さんを抱き抱え、スッと立ち上がると主任を見下ろした。

「また今度埋め合わせする」

「いや、別に。さっさと連れ帰ってくれれば俺は構わないよ」

専務の眉がひょいっと上がって、今度は私が見下ろされる。

な、ななな何ですか。

「では、松浦さんには、何か埋め合わせを……」

「け、けっこうですー!」

両手を使ってバタバタしていたら、専務がふわっと微笑んで、今度は軽く頭を下げてから店を出ていった。

や……なんかもう、もっのすごーく、緊張したぁ~。

へなへなと脱力していたら、主任がネクタイを緩めながら苦笑する。

「お前は誰にでも緊張するんだな」

「しますよ! 専務ですよ、専務!」

逆に緊張しない人がおかしいでしょ!
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