強引な次期社長に独り占めされてます!
まぁ、いいか。

「高井さんも来ていたんですね」

「うん。ただ酒飲めるし。お祭り騒ぎが好きだしね」

イベント会社だもの、そういう人は多いよね。

「ところで赤ゴシックのワンピースなんて、松浦さんのイメージ的に珍しい格好だよね。化粧もバッチリで人形みたいだ」

ライオンマスクの無表情で言われて、小さく吹き出しながら頷いた。

「はい。メイクは友達にしてもらいまし……た……から」

似たような会話をした記憶がある。

それもハロウィンだ。ハロウィンに眼が綺麗だねって言われて、友達にメイクをしてもらった話をして……。

「どうかした?」

「ああ、いえ……」

「じゃ。腹減ったから、また後でね」

爽やかに去っていく野獣を眺める。

うーん。何だろうなぁ……。

声は、死神さんによく似ているんだけど、高井さんは少し柔らかい口調だよね?

もうちょっと死神さんは……どこか断定的って言うかさ。

なぁーんか違う気がするんだよなー。

首を傾げていたら、近くの壁にドサッと誰かが寄りかかった。

「…………」

視界の片隅に見えるのは、何となく黒い人。腕を組んでいるのも見える。

……何だか黒のスーツに、手袋に?

そろっと視線を動かすと、会場を黙って眺めている仮面の横顔。

目元だけを隠す形の仮面とその姿は……オペラ座の怪人?
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