強引な次期社長に独り占めされてます!
人をジロジロ眺めるのは失礼だから、とりあえず前を向こう。

そう思って前を見て黙り込んで、数分が経過した。

「…………」

賑やかで華やかな会場は、やっぱり苦手だけど、眺めているだけでも楽しめるよねー。
まぁ、巫女さんとシスターが仲良くビールで乾杯しているのも、日本的と言うかさー。

考えてみれば、うちの会社って本当にイベント好きだなぁ。
ノリがいいって言うか、あっけらかんとしているって言うか。

うん。どうして私みたいなのが、この会社に採用されたのか、こういう賑やかさを見ていたら謎なんだけど。

でも、ほら。締めるとこでたまに引き締めないと、ぐだぐだになっちゃうもんね?

……なんて、関係ない事を考えてみたけど。

うう、隣のファントムがかなり気になります。

だって本当に黒い。
姿が……ではなくて、雰囲気が。

ファントムじゃなくて、フォースのおじさんでも良かったんじゃないかな。
暗黒面に落ちちゃってるんじゃないの?

いや、私も人のことは言えないけど。

いいや。喉乾いたし、高井さんにグラスを取り上げられたまんまだし、一石二鳥だからジュースを取りに行こう。

暗黒面に堕ちちゃってる、音楽の天使様は放っておこう。

歩きだしたら、呼び止められた。

「今日はなんの扮装だ? 魔女さん」

目を丸くして振り返る。

もしかして、死神さん?
< 110 / 270 >

この作品をシェア

pagetop