強引な次期社長に独り占めされてます!
「寒いですよー。それに夜も遅いし」

こんな夜遅くに、恐らく今は大混乱だろう神社なんて嫌ですー。

『お前は馬鹿か。こんな夜だから誘ってるんだろう。誰が好き好んで神社にデートなんて考えると思ってるんだよ。大晦日だぞ大晦日。日本のわびさび感じろ』

デートのつもりなの? いやちょっと待って。だいたいデートって何、デートって。

それにサクッと馬鹿って言われた? あまりにも失礼じゃない?

「私はインドア派なんです。この性格で23年生きているんです。覆すのは難しいです」

『そりゃそうだろうな。だけどお前は言ってるほど大人しい性格してないだろ。ポンポン言い返してくるし』

言い返さないと、流されてしまいそうだからですよ。

仕事中の主任はどちらかと言うと無口で、説明する時だけは長口上で、プライベートだと、こんなにざっくりはなす人だとは思ってもみなかったもの。

とにかく、起き上がって冷静に考えてみた。

「これから年越しそばを茹でて、それを食べながらDVD見る予定なんです」

『ああ。それでもいいな。腹減ったしなぁ』

それでもいい? それはどういう意味ですか?

……という言葉は、インターフォンの音にビックリして、発せられる事はなかった。

こんな時間に、自宅に突撃して来る友達はいない。芽依だって来るときには連絡をくれるし──

思わず通話相手の主任に助けを求めようとしたら、気がつけば通話は終了していた。

「……え。嘘でしょ?」
< 128 / 270 >

この作品をシェア

pagetop