強引な次期社長に独り占めされてます!
バタバタと部屋に戻ると会社用のバックをかき回して、カエルさんのキーホルダー付きの鍵と、予備の合鍵を探す……けど。

予備の鍵がない。

なくした時の為に、いつもバックのポケットに入れているのに。

つまり、新聞受けに入っていた鍵は予備の鍵って事だよね? 最悪だ!

「もしかして、お前は何も覚えていないのか?」

腕を組んで難しい表情をしている主任を振り返り、コクリと頷いてみせたら、盛大な溜め息が返ってきた。

「マジかぁ。通りでよそよそしいなとは思った」

頭を振りながら呟くと、じっと見つめ返してくる。

部屋でふたつの鍵を握りしめている私と、玄関で腕を組んだままの主任。

何だか変なシチュエーションだ。

「……上がってください」

「どうも」

苦笑しながら靴を脱いで、上がってくる彼を眺めて場所を空ける。

ワンルームにキッチンがついた私の部屋。

家具はベッドと、テレビ台替わりのカラーボックス。折り畳み式の白いテーブルの下にはフワフワ毛足の長いラグを敷いている。

クローゼットは備え付けで十分なので、洋服ダンスもないけど、それでもそんなに広くないから、ひとり増えただけでも狭く感じてしまう。

「お茶入れますか?」

「ん? マジで寛いでもいい感じ?」

「お話があります」

「……それは何だか嫌だなぁ」

ボヤくように聞こえた言葉に表情を消して詰め寄った。
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