強引な次期社長に独り占めされてます!
「覚えていないんですもん……聞かないと話が始まらないじゃないですか」

「えー……なら、高畑を呼ぶ。証人として」

「証人は第三者が望ましい……ではなくて、証人が必要なんですか?」

立ち上がってキッチンに向かうと、主任の少しだけ情けない呻き声が聞こえた。

「言いたくないなら言いたくないでもいいんですが。私は今まで通りに過ごすつもりですから」

「……いや。とりあえず寝てる女を襲う趣味はない」

寝てる女を襲うのは、犯罪ですから。

それに、そこは実は心配していない。
何故なら、あの赤いゴシックワンピは着るのも大変なら、脱ぐのも大変だったし……。

「いきなり何言ってるんですかー!」

頭を抱えて叫ぶと、主任はキョトンとしていた。

「それ心配してたんじゃないのか?」

「してません! 酔って記憶がないので、どんな醜態を晒したのか気が気じゃなかっただけです!」

「あー……それは安心していい。いつも以上に真面目だったから」

微笑みながら言われて、じっとその表情を窺った。

……嘘はないみたいだけど、私は人を見る目がないからなぁ。

ケトルにとお鍋に水を入れ、火にかける。

「男の子に何か作った事はないんですけど、どれだけ食べますか?」

何気なく振り返ると、本当にまじまじと、私を凝視している主任に出くわした。
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