強引な次期社長に独り占めされてます!
10:人それぞれ
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一月があっという間に過ぎた二月。
「営業部から計上が違うって、クレームが来ているんですけど」
事務所に戻ってくるなり、怒ったような幸村さんの言葉に、経理部の皆が顔を上げる。
“営業部から”計上ミスを指摘される事は珍しい。
それは主に、ベテランである野田さんが担当する事が多いからだけど、主任も二重チェックして提出するからだ。
「……どの書類の計上に相違があった?」
主任と野田さんが立ち上がり、幸村さんの持つ書類を覗き込む。
「ここと、この数値が、申請と違うって二課の方が……」
彼女が指摘する箇所を視線で追い、それから手持ちのタブレット端末を確認して、主任が眉をしかめる。
「この数値が不正解だと言うのであれば、元のデータから不正解と言うことなんだが……」
ポツリと呟いた主任の言葉に、幸村さんがカァッと赤くなって眉を吊り上げた。
「ええ? じゃあ、私は怒られ損ですか? 怒鳴られたんですけど」
「……最終責任は僕なのだから、幸村は何か言われても“確認して折り返します”で通せ。怒鳴るのはどうせ、二課の部長だろう? あの人は頭ごなしだから気にするな。どうにかする」
幸村さんから書類を受け取り、主任はデスクに戻ると内線を使い始め、その一連の同行を見守っていた芳賀さんが、どこか感心したように主任を見ている。
一月があっという間に過ぎた二月。
「営業部から計上が違うって、クレームが来ているんですけど」
事務所に戻ってくるなり、怒ったような幸村さんの言葉に、経理部の皆が顔を上げる。
“営業部から”計上ミスを指摘される事は珍しい。
それは主に、ベテランである野田さんが担当する事が多いからだけど、主任も二重チェックして提出するからだ。
「……どの書類の計上に相違があった?」
主任と野田さんが立ち上がり、幸村さんの持つ書類を覗き込む。
「ここと、この数値が、申請と違うって二課の方が……」
彼女が指摘する箇所を視線で追い、それから手持ちのタブレット端末を確認して、主任が眉をしかめる。
「この数値が不正解だと言うのであれば、元のデータから不正解と言うことなんだが……」
ポツリと呟いた主任の言葉に、幸村さんがカァッと赤くなって眉を吊り上げた。
「ええ? じゃあ、私は怒られ損ですか? 怒鳴られたんですけど」
「……最終責任は僕なのだから、幸村は何か言われても“確認して折り返します”で通せ。怒鳴るのはどうせ、二課の部長だろう? あの人は頭ごなしだから気にするな。どうにかする」
幸村さんから書類を受け取り、主任はデスクに戻ると内線を使い始め、その一連の同行を見守っていた芳賀さんが、どこか感心したように主任を見ている。