強引な次期社長に独り占めされてます!
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「いやー……昼間はウケたなぁ」

みんなで仲良く……したいわけでもないのに残業中。
主任は笑いながらも、パソコンとタブレットを睨んでいる。

「ほとんど主任のせいですからね。人事主任に注意を受けたのは。ああもう~。これ、明日までなのに」

幸村さんは眉間にシワを寄せ、テキパキと伝票整理。

「……僕、騒いでいないのに注意を受けたんですよ? 本当のところ、とんだとばっちりじゃないですか」

野田さんはファイルをめくり、営業部からのクレーム……実際には、訂正前の書類を持ってきた人が悪いけど、それを直しつつぼやく。

そして私と芳賀さんが、それぞれ書類を分けて黙々と打ち込み。

本日、沢井さんは有給でいないから結果として経理課の全員。

実はあの後、ガッチリ人事主任に注意を受けた。

主任クラスでも一番年上でもある楢崎主任の雷がガンガン降ってきて、身を縮めていたら、寿命も縮むような気分になりましたよ。

「でもまぁ。こういう残業は久しぶりですね」

野田さんが小さく笑いながら、主任を見る。

「上原さんが主任になってから、残業も減っていたのに」

「ペース配分が悪いんだ。心配しなくても、残業確定かな。今期の決算は波乱な気がしてきたぞ、俺は」

主任が答えてニヤニヤ笑った。

……何だろう、確かに主任の口調、変わった?

何だか二人でいる時みたいにフランクに聞こえる。

私がぱちくりして顔を上げるのと、幸村さんが目を細めて主任を睨むのとは、ほぼ同時だった。
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