強引な次期社長に独り占めされてます!
「いや、だから、納期は一週間後だろう?」

「一週間後はバレンタインです。女はソレまでの間の下準備が大変なんですよ」

「え。幸村、俺にもチョコくれるのか?」

「主任にあげてどうするんですか。彼氏にあげるに決まっているじゃないですか」

ついポロッという感じで出てきた言葉に、私は目を丸くして、芳賀さんがキラキラ目を輝かせて立ち上がる。

「幸村さん彼氏いるんですか!」

「……いるんですか、って、あなた失礼ね」

「だって、クリスマスデートしてた風じゃなかったし、まったくいるそぶりもなかったじゃないですか!」

「クリスマスイブにデートするとは限らないでしょう。お互いに仕事をしているんだから、何も忙しい時期に無理矢理会わなくったって……。それに、芳賀さんにバレたらうるさそうだし」

……それは、ちょっと……芳賀さんのウキウキした様子を見て納得してしまう。

「だって、人の恋ばなって楽しいじゃないですか! どんな人ですか、かっこいい?」

「……だから嫌なのよ。芳賀さんは年中頭にお花畑が咲き乱れているわよねぇ」

「いいじゃないですか。教えてくださいよ、減るもんじゃないんですし」

「減るような気がするから嫌よ。では、お疲れさまでした」

話している間にパソコンの電源を落としていたらしい。
幸村さんはさっさと立ち上がって退勤をスキャンすると事務所を出ていった。

「えー。教えてくださいよ~」

芳賀さんも負けじとパソコンを落とすなり、彼女を追って事務所を出て行く。後に残された野田さんと主任と私で、顔を見合わせ……それから吹き出した。
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