強引な次期社長に独り占めされてます!
私がいたら、事務所の鍵を閉められないね。

小走りでタイムカードをスキャンして、ドアを開けてからの後ろを振り返る。

「お先に失礼します」

「ああ、駐車場で待ってる」

え?
コートを持って、近づいてくる主任をまじまじと見つめた。

「送ってくれるんですか?」

「今日は車。問題はないだろう?」

ないですけど。ちょっぴり照れちゃうのは、どうしてなんでしょう?

入口近くのライトパネルを操作する主任が、不思議そうな表情で私を見下ろす。

「……学生デートみたいで楽しいだろう? もうちょっと早く終われば、食事して帰ろうって感じだが……そうすると飲みたくなるしなぁ」

明日も仕事だしね。

「ご飯、作りましょうか?」

「えっ!?」

「え?」

驚かれて、驚きを返す。

わ、私は何か変な事を言った? 言ってないと思うんだけど?

「え~……と。じゃあ、俺のうち来るか?」

どこかソワソワし始めた主任を見て、ハッと気がついた。

“ご飯作りますか”なんて、思いきり“家に誘った”みたいになっちゃっている。

主任は気を使って“学生デート”ノリでいてくれたのに、いきなり私が大胆にも爆弾発言しちゃったよー!

どうしよう、撤回する? 撤回できる?
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