強引な次期社長に独り占めされてます!
デコピンをくらって、反動で後ろに反り返る。

め、めちゃくちゃ痛いんですけど!

涙目になって主任を見ると、真っ直ぐ過ぎる視線に目が離せなくなった。

……どうしよう。

ドキドキするし、たぶん視界がクリアだから、前髪も全開なんだろうけど、直すのもなんだか気まずいし。

なんでこんなに緊張するんだろう。

いや、相手は大人の男の人なんだから、普通に緊張するものなんだろうけど……。

あれ。そう言えば……主任には私、あまり緊張してない? いつから?

お互いに黙って見つめ合って、しばらくしてから諦めたように主任は笑った。

「キスは、してないんだな?」

それを聞くかな~?

彼の笑顔で視線の呪縛は解けて、私はそよそよ~っと、キッチンの方を確認……するふりをする。

「お茶飲みますか?」

「飲まねぇよ、馬鹿。話そらそうとするんじゃない」

「馬鹿は傷つきますから……」

ブツブツ言って視線を戻すと、呆れたような表情と出くわした。

「呆れなくてもいいじゃないですか」

「呆れるだろ。とりあえずキスはできるぞ。いつでも。だけどしない」

出来るけどしない? それはどうしてなんだろう。

キョトンとしていたら、主任はスパゲティを食べ始めた。
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