強引な次期社長に独り占めされてます!
「うまい」

「あ、ありがとうございます……」

「お前は自炊派なんだな。一人だと作らない奴が多いだろ」

確かに面倒くさくて作らないこともあるし、野菜を買うとひとりには多いから腐らせちゃうこともある。
何かを単品で買うと高くつくような気がするし……。

「俺なんか近所の商店街の惣菜だぞ。うまい定食屋もあるし」

「スーパーのお惣菜や、コンビニ弁当だと飽きちゃうんです。でも、ひとりでお店に食べに行く勇気はありませんし……」

「あー……そんな感じか」

まるで“キス”の話がなかったのかのように会話をしながら食べ終わり、食器を片付け終わるとふたりでテレビを見始めた。

そりゃね、ご飯食べました、じゃあさようなら、ではないとは思うけど、今さらなんだか緊張がぶり返す。

だって、狭いワンルームの私の部屋。
ふたりでベッドを背もたれにして、床に座り、並んでテレビを見るってさ……。

触られてはいないけど、背後に主任の腕の気配を感じる。

「ガッチガチだなぁ? 何をビビってんだよ」

「緊張してます」

「あー……今日はなんもしねえよ」

今日はしないの?

いや。しないの?って、期待しているみたいじゃない!

いやいやいや、違うもんね! そんなことはないもんね!
< 179 / 270 >

この作品をシェア

pagetop