強引な次期社長に独り占めされてます!
「待ち合わせって言っても、単に俺が遅いからなんだけど」

でも、私を迎えに来てくれるってことじゃないか。元彼は、私が迎えにいかないと帰っちゃっていたし。

「抱きたいからこんな感じだが……」

暖かくて気持ちいいです。

「人肌って安心」

「いや、安心すんじゃねぇよ。せめて少しは興奮ってか、ドキドキ? みたいにならないか?」

「なりますよ。主任もなっているじゃないですか」

丸くなって、主任にピトッと胸に耳をつけてみると、けっこうなドキドキ加減だと思うんだ。

「お前ねー……」

ちらっと見ると、困ったような焦ったような、そして何だか喜んでいるような複雑な表情を浮かべる主任がいた。

……こんな顔もするんだ。

思っていたら、唐突にまた引き寄せられて身体が密着する。

「く、苦し……っ!」

そう感じたのは一瞬で、カプリと耳朶を甘噛みされて背筋を何かが走り抜けた。

「ひゃ……んっ」

耳元で感じるのは主任の吐息。

ぞくぞくしながら、そっと身体を離されて、覗き込まれる。

そして一言。

「楽しみだな」

な……なななななにが!?

パニックになる私を座り直させ、主任は笑いながら立ち上がった。

「んじゃ、そろそろ帰るな? 鍵、閉めろよ?」

脱いでいたジャケットとコートを持つとスタスタと玄関に向かい、それから振り返って、私に軽く手を振ると部屋を出て行く主任。

ガチャンとドアが閉まる音が響いた。
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