強引な次期社長に独り占めされてます!
*****


「今日は車予定だから、烏龍茶ふたつでよろしく」

大人しく畳の上に正座をして、それから次々と瑞枝さんに注文していく主任を見つめる。

お店に入った時の、瑞枝さんと主任のお兄さんのビックリした顔……きっとしばらく忘れられない。

しかも会社からここまで、歩いて来られると言っても、けっこうな距離があると思う。それを主任は私を抱えながら歩いたよ。

本当に、どんな人なんだろう、この人は……。

「あー……なんだ。幸村あたりと仲良くなったんだな」

注文が終わると、暖かいおしぼりで手を拭いてから主任はテーブルに肘をついた。

真っ直ぐな視線を向けてくるから、そっと視線を逸らして眉を下げる。

「仲良く……と言いますか、今日はたまたま芳賀さんに誘われて、一緒にご飯食べる事になったんです」

「まぁ、女子会誘われまくってたもんな。それは悪くない。お前の世界は狭そうだし」

そうですよ。知っている人としか会話しなかった結果、たぶん“普通なら知っている”と思われる情報も、私は知らなかった。

それは“芳賀さんが知らなかったから”と言うことなんだろうけど。

「主任と専務って、従兄弟なんですか?」

「まぁ、そうなるな」

ニッコリしながら肩竦めても、男の人は可愛くは見えないんだから!
しかも、あっさり言わないで下さい!

口をパクパクしていると、主任はふっと力を抜いてネクタイを緩める。

「言っておくけど、会社での俺は位置的にも下っ端だからな。株の話にもなったみたいだが……そんなもん、うちの会社の株だぞお前、よーく考えてみろ」

「うちの会社の……?」

「株式上場していても、まだまだ高値が付くほどの会社じゃねえだろ」

確かに経理課だもの、お金がどう動いているか、くらいのおおよその動きは把握しているけど。

……いや。うん。その前になんて言うか。

「平凡アピールする人は初めて見ました」
< 190 / 270 >

この作品をシェア

pagetop