強引な次期社長に独り占めされてます!
「幸人の事も、雲の上の存在扱いしているのが目に見えてわかったからな。これで一応、親族とかバレてみろ、お前の事だから引くだろう……とは簡単に推測できる」

……だって。親族には変わらないじゃないか。

私の知り合いで、親族の一人が“社長”です、なんて人はいないし。

「うちは平凡な家ですもん」

「うちだって普通の家だよ。しかも兄貴は小料理屋の板前だろ」

そう言われて、カウンターの中のお兄さんを眺めた。

主任よりも無表情で淡々と料理を作っているお兄さん。
眺めていたらバチッと目が合ってしまって、慌てて顔を戻すと今度は主任と視線が絡まる。

「じゃ、じゃあ、専務はお兄さんとも従兄弟なんですね。この間、素通りしていたような気がしましたが」

「ああ。クリスマスの時の話なら、そうだと思うよ。兄貴は駆け落ち夫婦だから、親族内じゃ行方不明者扱いだ」

「はい?」

するっと飛び込んできた、とんでもない言葉に瞠目すると、クスクスとした笑い声と一緒に烏龍茶と小鉢を置かれた。

「若かったのよ、お互いに。なかなか結婚に賛成してもらえなくて、飛び出しちゃったの。別に音信不通ってわけでもないのよ? 雄之くんは昔からこうして顔を出してくれるし、お父さんたちも来てくれるし」

瑞枝さんがサラサラと補足を入れてくれて、離れて行く。

「まぁ、親族内でも兄貴がここで店をやっているのを知っているのは、わずかなんだよ。でも、うちの社長もたまに来るぞ?」

「え!? か、かか帰る!」

「社長なんて会社を出たら、ただのおっさんだよ。お前は俺の彼女なんだから、堂々としてろ」

主任のその言葉に……。

「ええ!?」

いち早く反応したのは、何故かお兄さんと瑞枝さんだった。
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