強引な次期社長に独り占めされてます!
「俺なんて、ちょっと近い親戚って程度なんだし。そもそも名字が違うから安心しろよって言っただろ」

そんなこと……。

言っていたかもしれない。でも思い出せない。

「俺は名字が“上原”だから、社長の甥っ子だとはバレにくい。あんな小さな会社だが、それでも“玉の輿”狙う奴がそこそこいるってくらいだ」

「……あの。根本的に知らなかったんですから、そこは気にしていなかったんですけど……でも」

そこそこ地位のあるイケメンはモテるのは知ってるよ。
モテるなら、女の子なんてたくさん選んでいけるでしょ?

「……何が言いたいんだよ」

ふにっと頬を掴まれて、プニプニとつねられる。

「遊びなら他の方で遊んでください。最低限、こんな底辺にいる女じゃなくて」

「だから馬鹿だって言ってんだよ。遊びなら、ここまで面倒なのに構うか」

……面倒、とか言われてる?

「だって、夢見ちゃうじゃないですか。こんな私でも、好きになってくれる人が出来るんだとか……」

でも、そうやって夢見ちゃって、結果は夢は夢にしか過ぎなくて、目が覚めた時……。

現実はとても厳しいのを知ってるよ。

誰かを好きになった結果として、捨てられて傷つくのは私じゃないか。絶対に私の方だと思うもん。

人に好かれる自信なんてない。好かれ続ける自信もない。

自分だって、俯いてばかりいちゃいけないのはわかっている。

わかっているけど……。

主任は頬から手を離して、それから大きく息を吐いた。
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