強引な次期社長に独り占めされてます!
「勝手に悲劇のヒロイン気取ってんじゃねぇよ」

「な……っ」

「どーせ、いいように遊ばれて、ポイ捨てられるなら、今から“お別れしましょう”とか思ってんだろ。それなら、そうとしか言えねえだろうが」

目を細められて、その視線の鋭さに身を竦める。

やばい……主任が怒ってる。めちゃくちゃ怒ってる。

「幸人と従兄弟だって知ったら、引かれるとは思ってたけど、どれだけ悪い方に先読みしてんだよ、お前は」

「だ、だって……」

「勝手に“可哀想な私”を演出してんじゃねぇよ。くだらねえ」

「く、くだらなくなんてない! 主任を好きになったら、絶対に嫌われるもん! 嫌われて別れるくらいなら、傷も浅いうちの方が痛くない!」

お箸を置いて、テーブルに両手をついて身を乗り出す私を、主任は冷え冷えとした目で見返してきた。

「その救いようがない後ろ向き思考をどうにかしろよ」

「そう思うなら、やめちゃえばいいじゃないか!」

「簡単にやめられるなら苦労はねえんだよ。気になる女が四六時中目の前うろちょろして、どんどん卑屈になっていかれたら、俺がイラついて当たり前だろうが」

い、イラつくなら見なきゃいいじゃないか!

見て見ぬふりって、大人の標準的スキルでしょう?
見たくないものには蓋をして、背を向けて、通りすぎていくだけじゃないか。
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