強引な次期社長に独り占めされてます!
パシンと両手で顔を隠した私に、皆の動揺と戸惑いが伝わってくる。

「ど、どうしたんだ。いきなり」

「え。松浦さん。私は別に意地悪言ったわけじゃないよ? 小学生は言葉悪かったかも知れないけど、泣かないでね?」

沢井さんは驚き、幸村さんが盛大に誤解するなか、野間さんがクスクス笑い始めた。

「違うよ、幸村さん。松浦さんは照れているみたい」

指の間から野間さんを覗くと、微笑まれて俯く。

「わ、わかりづら……っ」

幸村さんの驚愕の言葉に、違った意味でますます俯いた。

……ですよね。
わかりづらいですよね。私も目の前に“こんな子”がいたら、どうしたものか迷って、挙動不審になってしまうかもしれません。

でも、気づいてしまったんです。

本人が目の前にいないこの状況で、どうして私が今まで“関係ない”と思っていたバレンタインに、行動を起こそうと思えたのか。

確かに、冒険は好奇心から、行動を起こすには勇気が必要。
そして、勇気には少なからず自信も必要だと思う。

甘いもの好きだから、主任はバレンタインを受け取ってくれるだろう……だとか。
彼氏だからバレンタインを受け取ってくれるだろう……だとか。

そんな理由の“自信”なら、相手のことなんて考えないでもいいわけだし、簡単に“有名なお店”のチョコレートを選べばいいわけで。

自分で“買いに行きたい”と思ったのは、間違いなく私が主任を“好きだから”だ。
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