強引な次期社長に独り占めされてます!
『お前ね。ワンギリって何だよ』

ちょっぴり不機嫌そうな声音が聞こえて来て、思わず正座する。

「ごめんなさい。ワンギリするつもりじゃなくて、ま、間違えたんです」

『そして間違い電話かよ。用がねぇなら忙しいから切るぞ』

「あ……」

……と言った時には、通話は切れていた。

切るの早いー!

確かに間違えてかけちゃったけど、用事がないわけじゃないんです!
単に“心の準備が整わないうちに”かけちゃったから、切っちゃったんですー!

……でも、忙しいからって言われた。

今日はもうかけられません。

ごめんなさい。
野間さん、幸村さん、沢井さん……そんなに接点もなかった、私なんかの相談に一生懸命乗ってくれたのに。

しかも、その後もキッチリいろいろ伝授してくれて、頑張らなきゃって決心していたのに。

もう自分が情けない。どうしてこうタイミングが悪いと言うか、間が悪いと言うか……。

やっても出来ない子なんだ、たぶん私はそういう子なんだ。

ベッドにうつ伏せになってグズグズしていたら、またスマホが鳴るから、何も見ずに通話をタップした。

「はい……」

『ちょい気になった。つーか、なんでいきなり鼻声になってんだお前』

耳に主任の声が飛び込んできて、ぎょっとしてスマホを放り出しそうになる。
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